宝塚歌劇団、タカラジェンヌにも、働き方改革が広がっている。

 「(深夜)0時になると、帰りなさいというアナウンスが流れるんですよね。今はすぐ帰らないと、怒られますから…」

 ある中堅スターは、稽古のまっただ中、焦りながら帰宅したという。

 「練習時間…というよりも、自宅などで自主的に練習することが多いですね。時間は…ええっと…」

 今月27日に星組公演で初舞台を踏んだばかりの104期生に、稽古時間を聞くと、困惑していた。自宅で振りを覚えるなどの時間と混同していたのだろう。

星組公演で、新入団生恒例のラインダンスを披露した104期生(2018年4月27日撮影)
星組公演で、新入団生恒例のラインダンスを披露した104期生(2018年4月27日撮影)

 宝塚歌劇は、宝塚大劇場と、その後の東京宝塚劇場にかける「本拠地作」がメインの演目で、5組が順次、毎月公演。期間はおおよそ30~40日で、開幕40日前には組メンバーが集合(集合日)し、全体での稽古を始める。

 そして、その「本拠地作」の合間には、全国ツアー、梅田芸術劇場や東京特別などの外部公演、宝塚バウホール公演があり、こちらはたいていの場合、30日前には集合。公演以外にもテレビ、イベント出演や、習い事も重ねて芸を磨かねばならない。トップスター、人気スターになると、休む間が少なくなる。

 多忙に加えて、かつては早朝から深夜まで稽古することも多かったが、最近は、日付が変わる頃には帰宅を促されるようになり、稽古場では以前以上に集中力が求められているという。

 取材の中でも、以前は「夜中まで稽古場に残って…」などとの言葉も聞かれたが、最近はほぼなくなった。終わりのない芸の道、少しでも良い舞台を届けようと、稽古を重ねれば、つい、時間も過ぎてしまう。ストイックに役へ向き合うタイプなら、なおさらだ。

 以前、前雪組トップ早霧せいなが、全国ツアーで「ベルサイユのばら」のオスカルを演じた際、本拠地作より稽古日程が短いため、少しでも役に触れていようと、“睡眠学習”を敢行。連日、過去作の映像を流しながら就寝していた。

 「でも、なんか、いつも寝覚めが悪いんですよね。橋の上の(銃撃され絶命する)場面のとこで目が覚めるんです」と話したことがあった。大好きな睡眠時間さえ、仕事に役立てようとしていた。

 早霧に限らず、タカラジェンヌは誰しも、いたずらに稽古時間を長くせず、役を作り込む工夫に頭を悩ませてきた。働き方改革の広がりで、これまで以上に効率的な稽古が必要になっている。【村上久美子】