女優上白石萌音(23)が、TBS系連続ドラマ「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」(火曜午後10時)で主演を務めている。ちょうど1年前に同枠で「恋はつづくよどこまでも」に主演し、大ブレークした。芸能界入りからはや10年。「自信はない」と言い切るも、目の前の仕事にひたむきに取り組む姿が多くの人の共感を呼んでいる。その魅力を探った。

★2回目の方が怖い

「オー!」では、ただただ平凡に生きることを願っているが、ひょんなことからファッション誌の編集部に配属された新入社員役を演じている。

「普通のヒロインとはひと味違った、どこか1歩引いたところのある子です。興味のない仕事を嫌々やるという新しいヒロイン像。彼女がどういう風に変わっていって、この仕事にやりがいを見つけられるのかどうか。どう折り合いを付けていくのか、完全オリジナルなので我々もまだ結末を知らされていなくて、みんな手探りで新鮮な気持ちで作っているところです」

役柄とは、共通点も多いという。

「わかるな~って。私もこういう仕事しておいてあれですけど、あんまり注目されるのも、緊張したり落ち込んだりとかなるべくしたくないタイプなんです」

菜々緒(32)演じる切れ者の編集長・麗子の下で働く中で、奮闘・成長していくストーリーだ。

「仕事に関しては、麗子ほどはいかないけど、それくらいの覚悟を持ってやっているつもりです。ただ麗子に、ぐさっと刺される言葉が私自身も痛くて…本当に痛いところをついてくる気がする。めちゃ逃げているなっていう。そういうのを、本当に心に受けながらやっています」

“子犬系イケメン”天然御曹司のカメラマン役を演じるKis-My-Ft2の玉森裕太(30)との恋模様も、物語の重要な軸となる。

「(役柄が)全部のせセットみたいですよね(笑い)。癒やされますけど、結構振り回されます。ただ一目ぼれとかじゃないので、そこの進展も注目ですね」

大ヒットした「恋つづ」に続いて主演を務める。周りの期待も大きい。

「プレッシャーはありますね。もちろんあります。1人になると吐きそうになるくらい。やっぱり、何でも1回目より2回目の方が怖いんですよね。1回目ももちろん怖いけど、知らない強さもあるので。だから前回も相当おびえていましたけど、それ以上に今回はいろいろ考えちゃって。だけど、まあ主演っていうのはただのラベルだと思っているので。たまたま最初に名前があるだけ。現場にはたくさんのプロがいて、みんなそれぞれの役割を全うしている。私も自分に求められていることをやるだけだっていう思いです」

2011年1月9日に開催された所属事務所のオーディション「東宝シンデレラオーディション」をきっかけに芸能界入り。10年がたった。

「10年もやれるとは思っていなかったので、とにかくびっくり。1月9日になってみて、『はーまだ続けている私』って感じましたね」

この10年の間に、心境の変化もあったという。

「あの時の方が緊張しなかったし邪念もなかった。なんか戻りたいって思うときがたまにあるくらい。今でも毎回死ぬほど緊張して不安になるんですけど、いつものことじゃんってこの10年で思えるようになった。不安に思いながらちょっとだけ気が楽になった。自分のリズムとか性質を知れるようになってきたっていう実感はあります」

★一生「おどおど」で

連ドラで主演を務めるまでになったが、「自信」はないという。

「相変わらず、すごく準備に時間がかかるし、毎回不安なのは変わっていないので。でもそこは自分的には安心しています。それをなくしたらダメな気がしていて。あんまり自信がない方が性格的に、いいと思うので。私はそれでいいやって思います。一生、おどおどしていると思います(笑い)」

自信はないとはいいつつ、「武器」と思っていることはあるのだろうか。

「よく『芸能人っぽくない』って言われるんですけど、それは武器にできるかも知れない。庶民感? を失いたくないです。私みたいな人間は庶民派な役をいただくことが多いので、そうなったときに、やっぱり、庶民にしか出せない味があると思う。そこはなんとなく、もしかしたら強みに出来るかも知れないですね」

地元鹿児島で小学生時代からミュージカルスクールに通い、歌や踊り、表現力を鍛えた。16年に社会現象を巻き起こしたアニメ映画「君の名は。」(新海誠監督)で務めたヒロインの声で感動を巻き起こし、注目はさらに高まった。数々のドラマ、映画、舞台で活躍しつつ美声を生かし、歌手としても活動している。

「いろんな作品で、監督が『この子にやらせてみよう』ってある意味大きな賭けをしてくださったからこそ、今があると思います。作品に大きい小さいはなくて、1個1個のことを思うと本当に恵まれています」

10年後の自分を想像してもらいたかったが、長期的な目標は立てないという。

「目標を持っていないんです。でも変わらずにいたいです。目の前のことを必死でやっていたら10年たっていたので、あと何年続くか分からないですけど、これからも地道にやっていこうかなって思います」

27日に23歳を迎えたばかり。若い役が多いが、年を重ねれば役柄も変わる。

「今は新人の役ばかりですが、ちょっとずつ年を重ねるごとに、きっと先輩の立場になったり、母になったりすると思うので、自分自身の人間としての『深み』みたいなものも、ちゃんと見つけられるように。芸だけではなくて、普段の生活も大事にしたいなって思います」

「ボス恋」に加え、2月開始のNHK大河ドラマ「青天を衝け」にも出演。今年後期のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」では深津絵里、川栄李奈とともにヒロインを務めるなど勢いは止まらない。

「去年いろいろと取り上げてもらったりとか、評価してもらったことをどうしても自分のことと思えなくて…他人ごとみたいになっちゃっているところがあるので、今年はちゃんと自覚と責任を伴いながら仕事をしていかないとなって思っています(笑い)。元々、流されやすいところもあるので、自分はどう思うのか、どうしたいのかっていうのをより大事にして、健やかに、1年を終えられたらいいなって思います」【佐藤成】

▼「ボス恋」で上司役を演じる菜々緒(32)

ドラマでのキャラクターとしてもご本人としても真逆なタイプなんだなってお互いに思っているんですけど、それがむしろ良い。私は結構せっかちだったりするんですけど、萌音ちゃんは自分のゆとりを持っています。真逆だからこそ、刺激しあえて、勉強させられます。常にニコニコされて、穏やかで現場の雰囲気を和やかにしてくれて、本当に素晴らしい座長だなって思いますね。私ってこういう容姿なので、近寄りがたい、とかいわれるんですけど、壁を越えて話しかけてくださる。積極的に話しかけてくれるのが内心めちゃくちゃうれしいです。

◆上白石萌音(かみしらいし・もね)

1998年(平10)1月27日、鹿児島県生まれ。11年「東宝シンデレラオーディション」で審査員特別賞。同年NHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」でデビュー。映画は14年「舞妓はレディ」で初主演し、「ちはやふる」「羊と鋼の森」などに出演。20年1月期のTBS系「恋はつづくよどこまでも」でゴールデン・プライム帯連ドラ初主演。舞台は「赤毛のアン」などで主演。16年歌手デビュー。妹は女優上白石萌歌(20)。152センチ。

◆「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」

上白石演じる安定志向の平凡な新入社員が、菜々緒演じるストイックな女性鬼上司に立ち向かいながら、玉森演じるイケメン御曹司との前途多難な恋にも挑み、仕事もプライベートも成長していく物語。略称は「ボス恋」。

(2021年1月31日本紙掲載)