劇団四季ミュージカル「アナと雪の女王」が今月24日、東京・四季劇場「春」で開幕した。新型コロナの影響で9カ月遅れの開幕となったが、ベールを脱いだステージは圧巻のひと言。劇場は、すごいものを見た観客たちのどよめきと、鳴りやまない拍手、心躍る笑顔にあふれていた。

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劇団四季ミュージカル「アナと雪の女王」のゲネプロで。「ありのままで」を歌うエルサ(岡本瑞恵)
劇団四季ミュージカル「アナと雪の女王」のゲネプロで。「ありのままで」を歌うエルサ(岡本瑞恵)

エルサの魔法が作り出す雪と氷の世界を舞台上でどう表現するのか。そのハイライトとなるのが、公開舞台稽古でも大きな話題を集めた1部のラスト「ありのままで」のナンバーだ。

魔力を開放したエルサ(岡本瑞恵)の歌と動きに合わせ、最新鋭のプロジクションマッピングとLEDパネルで森がみるみる氷の宮殿に変わっていく。粉雪、吹雪、輝く雪片、氷の結晶、氷柱などさまざまな雪の世界が広がり、文字通り“劇場が凍る”ような体験。音楽の盛り上がりとともにエルサの心の変化がありありと伝わってきて、感情と一体化したステージがドラマチックなこと。アナログとデジタルの両輪でどんな表現も可能にするミュージカルの魔法に、客席もしばらくどよめいていた。

劇団四季ミュージカル「アナと雪の女王」のゲネプロで。世界を氷に変えていくエルサ(岡本瑞恵)
劇団四季ミュージカル「アナと雪の女王」のゲネプロで。世界を氷に変えていくエルサ(岡本瑞恵)

同じ城で育ちながら、戴冠式までずっと引き裂かれて暮らしたてきた姉エルサと妹アナが、互いの壁を乗り越えながら世界を救い、未来をつかむ物語。ミュージカル版では、2人が引き裂かれた原点となる幼少期の出来事から丁寧に描き、姉妹の物語を強く打ち出している。

望まない魔法能力をコントロールできず妹を傷つけてしまった幼いエルサの心の傷と、引き離すことで姉妹を救おうとした両親の悲劇が、ストーリーに効果的に横たわる。アナのために部屋にこもったエルサの人生はどれだけ不安で孤独だったかと思うし、理由も分からず姉と引き離されたアナの底抜けなエルサ愛にも説得力がある。陰陽な2人が引き合って起こす奇跡に応援しがいがあるのだ。

劇団四季ミュージカル「アナと雪の女王」のゲネプロで。エルサ(岡本瑞恵)の戴冠式の様子
劇団四季ミュージカル「アナと雪の女王」のゲネプロで。エルサ(岡本瑞恵)の戴冠式の様子

作品はコロナ禍で9カ月遅れの開幕という困難に見舞われたが、個人的には、この時期に見られたことに救われた。原題の「FROZEN」ではないが、元の生活が1年以上フローズンし、気持ちもフローズンしがちな中、行き場を失っても「生きる」ほうに手を伸ばしたエルサの強さや、ポジティブに壁をこじ開けていくアナの推進力、2人が出会う人々のたくましさなど、本来人間に備わっている力の数々に勇気をもらえたのだ。

物理的に引き裂かれていた姉妹のきずなを通し、ディスタンス時代の生き方にヒントをもらったというか。冒険やファンタジーというフィクションだからこそ表現できる人間の魅力がキラキラとあり、演劇の底力に圧倒されっぱなし。姉妹が自力でつかみ取った未来は、今を生きるすべての人への応援に満ちていると感じた。

劇団四季ミュージカル「アナと雪の女王」のゲネプロで。王子と踊るアナ(三平果歩=右)
劇団四季ミュージカル「アナと雪の女王」のゲネプロで。王子と踊るアナ(三平果歩=右)

作品では、「ありのままで」「生まれて初めて」「雪だるまつくろう」などのオリジナル曲に10曲以上の新曲が追加され、キャラクターと物語の魅力がくっきり。あと、雪だるまのオラフがかなり面白いというか、ほっこりというか、笑えます。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)