韓国ドラマ「梨泰院クラス」の日本版リメーク「六本木クラス」(テレビ朝日系、木曜午後9時)も全13話のうち6話が終わり、いよいよ折り返し地点にさしかかりました。「再現度」に重点を置いたディフェンシブなリメークではありますが、物語本来の握力に引っ張られてなんだかんだ楽しく見ています。

「梨泰院クラス」の主人公、パク・セロイ(パク・ソジュン)の名ぜりふの数々もほぼそのまま。主人公、宮部新を演じる竹内涼真を通してセロイのイズムがよみがえり、新たな感動があるのも事実です。6話時点でもセロイ名言集があれこれ出てきましたので、竹内版バージョンでいくつかメモしておきたいと思います。

◆「1回くらいって何だよ。その1回があと1回、もう1回、最後の1回って、そうやっていつのまにか人は変わっていくんだよ」

未成年と知らずに葵(平手友梨奈)を入店させてしまい、警察に出頭した新が営業停止処分を食らう場面でのせりふです。“天敵”に頭を下げれば、特別に助けてくれるという局面。「1回我慢して頭を下げれば済む」と説得する葵に、新が激怒して答えた言葉です。新のアツさと実直さ、それゆえに窮地に立たされがちな体質がよく分かる序盤の名ぜりふ。言動のインパクトに面食らい、この主人公に一気に興味が沸くシーンでもあります。

◆「お前は自分で自分の価値を下げている大バカ野郎だ」

新と亮太(中尾明慶)が出会った刑務所時代の回想シーン。「努力してもムダ。刑務所入った時点で人生終わってる」とからんできた亮太に、新が言い放つ言葉です。日本版はちょっとソフトな感じ。韓国版は「もう人生に価値はないのか? 自分の価値を自分で下げて安売りするバカめ」「貧しさや、学のなさ前科持ちを言い訳に?」「何だってやる。自分の価値は自分で決める」とズバリ。出所から数年後、2人の人生にはとんでもない開きが出ていて、平等な時間をどう生きるかという重みがずっしりと胸に残ります。

◆「いい会社に就職することがお母さんの望みなら、いつか『みやべ』は最高の就職先になると思う」

天才的頭脳を持ちながら大学進学をやめ、居酒屋「二代目みやべ」のマネジャーになった葵。母親に勘当されて家を出た彼女に、新が掛けた言葉です。自分の道は自分で決めろ、みたいな無個性な言葉ではなく、具体的な展望に基づく励ましの頼もしさたるや。その根拠は「だってお前がいるだろ」。尊敬する人にこんなこと言われたら、死ぬまでついていくと思えるパワーワード。本家は南山タワー、日本版は東京タワーを背景にした夜明けの名シーンです。

◆「長屋は俺がブッつぶす。俺があの会社から絶対自由にしてやる」

新と敵陣営の板挟みで苦しむ初恋の人、優香(新木優子)を乗せたタクシーを追いかけて叫ぶ、一直線な愛の告白です。「梨泰院クラス」では、深夜バスを追いかける屈指の名シーン。ヘッドライトの美しい演出、無情に閉まるバスの扉、窓を見上げて叫びながら走るセロイ、夜景が映る座席に泣き崩れるヒロイン。公共交通機関ならではのドラマチックな“引き裂かれ感”が、「六本木」では住宅街でタクシーを拾うというおもしろ展開でネットが騒然。「チープすぎる」「コメディーかよ」「タクシーに張り付く竹内涼真に爆笑」などと突っ込まれまくりで少々残念ではありました。せりふも、「ブッつぶす」より本家の「始末する」の方が決然としていてかっこよかったと感じます。

「信念と気合が俺の生き方」という主人公だけに、この作品は全話通してかっこいいせりふの宝庫。今回は主人公のせりふに焦点を当てましたが、後半戦はダブルヒロインや店の仲間たちにも、魅力爆発のせりふがめじろ押しです。日本版キャストもそれぞれの役にはまっていますので、どう表現してくれるのか楽しみです。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)