12日夜にミュージカル「王様と私」のプレビューで米ブロードウェーデビューした渡辺謙(55)が一夜明けた13日、ニューヨークの劇場で会見した。「本当にここでショーをやっていくんだという実感が足元から来た」と本場の空気を感じ取った様子。来月16日に本公演が開幕する。「55歳にしては最大のチャレンジになる」と意気込んでいた。

 緊張のプレビュー初日から一夜明け、渡辺は笑顔で取材に応じた。約1000人収容のリンカーンセンターのビビアン・ボーモント劇場で上演され、満員の大盛況だった。観客の大半は目の肥えた米国人で、日本人は少数だった。王様を演じた渡辺の英語のせりふに笑い声が起こり、歌声に拍手が起こった。カーテンコールは総立ちの拍手となった。

 03年の映画「ラストサムライ」で米アカデミー賞助演男優賞にノミネートされるなど、今やハリウッド映画の常連だが、ミュージカルは初挑戦。プレビュー初日は同行した妻の女優南果歩(51)が用意した赤飯を食べてから舞台に立った。この日は「自分の感触と相手の感触、お客様を含めての感触と、本当にここでショーをやっていくんだぞという実感が足元から来るような、そういう一晩だった」と振り返った。映画との違いについては「映画はある程度間違いを許容するが、ミュージカルはミスを減らさないとお客さんに届かない」と話した。

 2年前に出演依頼が届いた。気鋭の演出家バートレット・シャー氏に「ベストシンガーもベストダンサーもいらない。キングが欲しい」と口説かれた。昨年9月からインターネット電話サービスのスカイプでニューヨークのトレーナーに週2回、英語せりふのレッスンを受けた。年明けに渡米し、1月中旬から本格的な稽古に励んだ。「芝居が全ての生活は楽しかった」。

 「王様と私」は19世紀のタイ・バンコクを舞台に王と子供たちの家庭教師の英国人女性の関係を描いた名作。1951年の初演から3回もリバイバルされた。「アジアンテイストでありながら、現代的な社会問題や、ある種のレイシズム(人種差別)が残っている点など深いテーマ性がある。この作品を15年に届けられることに喜びを感じる」。

 プレビューは1カ月続き、本公演は来月16日から7月までの長丁場。「英語で表現する精度を上げて深めていかないと、この役に立ち向かえない。本当のミュージカルに僕も参加できるような態勢を作りたい。明らかに55歳にしては最大のチャレンジになる」。ブロードウェーの歴史に名を刻む1歩を踏み出した。