第29回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が5日、決定した。宮崎あおい(31)は「怒り」で迫真の演技を披露し、「バースデーカード」で母親役を好演して助演女優賞を受賞した。授賞式は28日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われる。

 宮崎は「バースデーカード」で、死後も子供たちを見守り続ける母親を演じた。31歳。母親役も舞い込むようになった。「うれしいです。疑似体験で自分の子供が増えていくので。いずれはもちろん親になって、自分が受け継いできたものをつなげていかなければ」。

 この撮影の1カ月後「怒り」の撮影に入った。父親と同じ漁協で働く正体不明の男に思いを寄せる愛子を演じた。原作のイメージに近づけようと1カ月間で7キロ増量した。「寝る前にアイスや炭水化物を食べたりしました。目標の10キロ増にたどりつけなかったのは悔しいです」。それ以上に悩んだことがある。「監督の思い描く愛子にたどりつけてないんじゃないか、と。監督は『もっとこうして下さい』とはおっしゃらない。人に追い込まれるのはこんなに大変だとか、初めて味わう感情がたくさんありました」。

 「お父ちゃん」と呼んだ父親役の渡辺謙(57)に、助けられた場面がいくつもあった。「ここにいるだけでいい」と言われ、人が集う部屋で一緒に過ごした。「家族の話をしたり、私がしていた刺しゅうの話だったり。たわいもないことを話しました」。自然と親子のような空気が生まれた。

 渡辺がキャストやスタッフ全員に、焼き肉弁当を差し入れる姿を見た。「役者さんとしてすごくすてきですし、みんなが付いていきたくなる気持ちもすごく分かった。渡辺謙さんみたいになりたい。私の新たな目標です」。

 02年に新人賞、11年に主演女優賞を受賞。“3冠目”について「純粋にすっごくうれしいです。違う、うれしさがある気がします」と達成感をにじませた。【近藤由美子】

 ◆宮崎(みやざき)あおい 1985年(昭60)11月30日、東京都生まれ。01年「EUREKA」で映画デビュー。02年「害虫」で仏ナント3大陸映画祭主演女優賞、日刊スポーツ映画大賞新人賞。「NANA」「少年メリケンサック」「舟を編む」など話題映画に出演。11年「ツレがうつになりまして。」「神様のカルテ」で日刊スポーツ映画大賞主演女優賞。163センチ。血液型O。

 ◆バースデーカード 紀子(橋本愛)は、幼いころに亡くなった母(宮崎あおい)が生前したためたバースデーカードが誕生日に届くのを楽しみにしていた。20歳になるまで届くはずだったが心の成長とともに手紙に束縛されるような思いを抱き始める。吉田康弘監督。

 <助演女優賞・選考経過> 「『怒り』の独特の浮遊感は、なかなか出せるものではない」(福島瑞穗氏)「心でも体でも表現している」(伊藤さとり氏)と、宮崎が1回目で過半数。広瀬すずも「笑顔に救われた」(品田英雄氏)と評価を得ていた。