演歌歌手川中美幸(61)の母、川中久子さん(享年92)の通夜が6日、東京・品川区の霊源寺で営まれた。

 「一卵性親子」と呼ばれるほど仲が良いことで有名な母と娘だった。

 通夜の前に川中は会見を開き、「働き者で、自分のことよりも他人のことを考える慈愛に満ちた人でした」と涙を流しながらしのんだ。「最後は自宅で介護をしていたので、みとることができた。自分の名前を16回も呼んでくれて眠るように旅立ちました」。

 祭壇は星をイメージして花で飾った。「ある夜、2人で散歩をしていたら、お母ちゃんが『芸能人は親の死に目に会えないもの。もし、自分が死んだら一番輝いている星がお母ちゃんだよ』と言っていたから…」。

 遺体には、遺影にも使った写真で着ていた大好きな着物を着せ、棺には川中のCDや好物のお好み焼きと焼きそばを入れた。

 最後にかけた言葉は「最高の人生をありがとう。お母ちゃん!」だった。

 デビュー41年の川中にとっての最大のヒット曲は80年発売の「ふたり酒」。同曲のヒットの裏には久子さんの存在があった。

 17歳で「春日はるみ」としてデビューしたが、全く売れずに「川中美幸」として再デビューして3年目。「ふたり酒」の歌詞を読んだ川中は「これは売れない」と直感で思った。夫から糟糠(そうこう)の妻へ感謝を語る詞の世界観が、24歳の川中にはピンとこなかったからだ。だが、当時、離れて暮らす久子さんに電話で詞を朗読すると「いい詞だね…」と涙を流して感激してくれた。

 発売直後から「ふたり酒」の人気は全国で広がり、自身初のミリオンヒット曲に成長。同曲で81年にNHK紅白歌合戦に初出場をした。

 テレビでこの曲を歌唱する川中の姿を久子さんは何よりも好きだったという。

 式には山本譲二、天童よしみ、長山洋子、松平健、山本リンダらが参列。

 葬儀は7日正午から同所で行われる。