9月に大麻取締法違反容疑(所持)で逮捕、起訴された俳優伊勢谷友介被告(44)の初公判(村田千香子裁判長)が1日、東京地裁で開かれ、検察は懲役1年を求刑した。同被告は法を犯している認識はあったとした一方、海外では大麻が合法の国もあるとして「誰かを傷つける犯罪ではない」と語るなど順法精神の甘さをのぞかせた。一方で逮捕で生じた損害賠償に自己資産の大半を費やし、今後の見通しも立たないと明かした。裁判は即日結審し22日に判決が言い渡される。

   ◇   ◇   ◇

9月30日の保釈から2カ月。伊勢谷被告は黒のスーツ、濃紺のネクタイ姿、髪は側頭部から首筋まで短く刈り上げる2ブロックで、そのまま舞台あいさつに立てそうないでたちだった。職業を聞かれると「俳優、実業家」と答えた。

起訴状によると、9月8日、自宅で乾燥大麻4袋(計約13・17グラム)を所持した疑い。伊勢谷被告は「リラックスするため」と、あくまで使用目的だと説明。コロナ禍で自宅にいる時間が長くなり「空いている時間に使ってしまった。プレッシャーがなく睡眠を取ることが出来る」とも語った。飲酒もするが「大量に飲むと翌日に影響がある。俳優という体を維持する職業でもあるから(嗜好品には)適しない」と持論を展開した。

大麻を始めたのは「26、27歳頃、オランダのアムステルダム」で、断続的に使用を続け、19年秋から再び使用し始めたという。自宅で押収された乾燥大麻4袋(計約20・3グラム、末端価格12万円相当)は逮捕2、3日前に知人から購入。知人は反社会勢力の関係者ではないとしたものの「使用するのは私の勝手。誰かを傷つける犯罪ではない。その人を社会にさらす必要はない」と明言を避けた。「法律違反なので良くないと思う」と言いつつ「医療目的、嗜好品として認める国も多く、税収もある」と持論を展開した。

裁判長から「社会的に影響力を持っていることは歯止めにならなかったか」と聞かれると「ここまでとは考えられなかった。海外で悪いものではないと認識が甘くなっていた」と答えたが全てを失った。08年に立ち上げ、代表を務めたリバース・プロジェクトで社会貢献活動をしてきたが「私のみ残り、活動の多くが出来なくなった」という。19年に設立した高校の学長も解任。関係各所への損害賠償で「稼いだお金の大半を提供せざるを得なくなり今後の見通しも立たない。生活も苦しくなる」という。

大麻に2度と手を出さないかと聞かれ「誓います」と答えた伊勢谷被告。遅すぎた気付きが、自身の人生だけでなく、良くしようとした世の中をも深く傷つけた。【村上幸将】