<第16回日刊スポーツ・ドラマグランプリ受賞作品発表>

 「第16回日刊スポーツ・ドラマグランプリ」作品賞はフジテレビ系「鍵のかかった部屋」が選ばれ、主演男優、助演男優、助演女優と合わせて4冠達成となった。小原一隆プロデューサー(35)にとって初プロデュース作。理系人間の趣味がきっかけで生まれた企画だった。

 当初は深夜ドラマの企画だった。宇都宮大工学部出身の小原プロデューサーは「理系トリックのミステリー好き」だった。作家貴志祐介氏の原作「防犯探偵・榎本シリーズ」を読んで11年夏に「45分×4本」の深夜ドラマ枠に紙1枚の企画書を上司に提出した。するとすぐに「『月9』でやってみろよ」となった。

 マニアックな密室ミステリー。視聴者に伝わるか不安だった。番組冒頭、大野智(32)戸田恵梨香(24)佐藤浩市(52)の3人が謎解きのポイントを説明する場面をつくった。フジテレビの人気刑事ドラマ「古畑任三郎」の構成と似ているが「そう言われたとしても視聴者にちゃんと説明しようと思いました」。謎解きの説明には時間も予算も掛けた。大野演じる榎本径が使った模型は「高いもので100万円ほど。制作に約1カ月かかった」。

 深夜ドラマを想定していた段階から大野起用を考えていたが「深夜では無理だろうなと思っていましたが『月9』でやることになって実現した」。せりふには防犯の専門用語が使われ、量も膨大だった。「NGも少なく、よくこんなに覚えてくるなと思った」。

 戸田の起用は「演技にすごく真面目。コミカルな演技に正面から向き合う姿を見たかった」。重要なアクセントになったのは、原作にはないオリジナルキャラクター、弁護士芹沢豪を演じた佐藤の演技だ。「若い2人を俯瞰(ふかん)し、視聴者目線で見る大人がほしかった。たくさんのアドリブを入れていただきました」。

 今も続編制作を熱望する手紙が局に届く。「個人的には実現したいですね」。【三須一紀】

 ◆鍵のかかった部屋

 作家貴志祐介氏の同名小説などが原作。警備会社勤務の防犯オタク榎本径(大野智)が密室で起きた殺人事件の謎を解いていく1話完結のミステリー。謎解きとともに真面目で純粋な新人女性弁護士(戸田恵梨香)やその上司のベテラン弁護士(佐藤浩市)との絶妙なやりとりも話題に。共演は能年玲奈、宇梶剛士ら。放送11回の平均視聴率は16・0%。

 ◆ドラマグランプリ

 3月22日から29日まで日刊スポーツのホームページ「ニッカンスポーツ・コム」やスマートフォンサイト「ニッカンエンタメ・プレミアム」、携帯サイト「ニッカン芸能!」と宅配読者の携帯会員サイト「ニッカンポイントクラブ」で昨年4月から今年3月までに放送された連続ドラマを対象に「主演女優賞」「主演男優賞」「助演女優賞」「助演男優賞」「作品賞」を選ぶアンケートを実施。各期(4、7、10、1月)ごとのベスト5、各部門計20人(作品)を候補とした。投票総数は2624票。男性が685票、女性が1939票。10代以下が45票、20代109票、30代358票、40代1026票、50代823票、60代以上が263票だった。