師走の風物詩、「ユーキャン新語・流行語大賞」も発表され、いよいよ今年も最終盤。同賞の候補作には毎年、政治関連の言葉も入るが、今年、トップ10に入ったのは「ご飯論法」だけだった。言い逃れのために駆使された論法の意味だが、最近の国会の後ろ向きな空気を象徴するような、言葉かもしれない。

そんな永田町で先月20日、自民党議員が「落語を楽しみ、学ぶ国会議員の会」(落語議連)を設立、設立総会が開かれた。落語を愛する政治家は多く、確かに今まで議員連盟がなかったことが不思議だ。立川談四楼は「落語の『落』が、落選の『落』につながるから、ためらったのではないか」と分析したが、実際、出席議員のあいさつでも「落伍(落語)しないように」とか「我々はオチないように」とか、「落」関連の表現を堂々と『解禁』。国会議員にとって「禁句」の「ラク」「オチ」の言葉を、国会でこれほどおおっぴらに聞いたこともない。

出席した落語家の顔ぶれも豪華だった。柳家さん喬、春風亭昇太、立川談四楼、三遊亭円楽、桂米團治と、いずれも当世の人気噺(はなし)家たち。その話術は「ご飯論法」や昨今の大臣失言とは対照的に、わかりやすくて味わいあるやりとり。今の国会論戦にいちばん欠けた側面だった。

冒頭から、さん喬が「噺家が国会議員の先生に落語を聞いてもらったり交わる席を持っても、利害関係があってはならない」と決意表明したかと思うと、「ちょこっとは思っている」と落として、場内爆笑。師匠・立川談志譲りの辛口の談四楼は「私はツイッターで安倍さんや麻生さんを激しく批判し、(発起人の小泉)進次郎さんもたたいた」と話し、雰囲気が微妙になったかと思うと、「自民党だけが集まるとスパイ扱いを受けるので、議連のメンバーはぜひ超党派で」と、前向きな議連運営を促した。

一方、円楽は「落語にもギャグやくすぐりはあるが、枝葉末節において笑わせているのではない。国会を見ているとただの揚げ足取り。小さなところを突いておもしろがっている」とチクリ。普段の国会を、ため息交じり見ているのではないか。

記者の質問に答える形ではなかったが、「最後にひとこと」と発言したさん喬の言葉が、胸にしみた。落語を聞いた海外の関係者に「お互いの国の文化を理解すれば、地球上から戦争がなくなるだろう」と言われたとして、「相手を理解することでそれが笑いにつながる。くさしては笑いにはならない。とても大事なことで、議員の先生もお互いを理解してほしい」。世界平和を語ったようで、与野党対立への注文にも聞こえる。「すばらしい」と声をかけられると、「まとめのさん喬といわれますから」と、豪快に笑った。

笑いも毒もありながら、最後はほろり。国会議員とのやりとりも含めた1時間の総会自体が、1つの落語のようだった。