政府が19日、閣議決定したギャンブル依存症対策の基本計画で、パチンコ店内の「ATM等の撤去等」が盛り込まれた。しかし対象となるATMは「抑制機能つき」で、のめり込み対策として引き出し制限がついている。いわば依存防止のためのATMだが、これを撤去することで、依存を防げるのか。議論を呼びそうだ。

抑制機能つきATMは、2007年(平19)から導入が始まった。昨年12月現在、全国のパチンコ店の約10分の1にあたる約1100店に導入されている。手軽に現金を引き出せる利便性の一方、その手軽さが依存を助長するとして国会でもたびたび議論されてきた。計画では、警察庁が「ぱちんこにおける取組」として「平成31年度中に」「撤去等に向けた検討に着手し、その結果に基づき順次、撤去等を推進する」方針を盛り込んだ。

ATMを設置するトラストネットワークス(本社・東京)は「計画は唐突で、非常に当惑している」とする。同社によると、2000年代前半、パチンコ店周辺にある消費者金融のATMが多重債務を引き起こすとして問題になり、店周辺での消費者金融ATMの新設が制限された。一方で、使いすぎやのめり込み防止のため、利用制限をつけたATMの導入が図られた。

利用制限は、段階的に引き上げられ、今年3月からは従来の引き出し限度が日額3万円、月額8万円の制限に加え、新たに1日2回まで、と制限もついた。データは集中管理されており、複数のパチンコ店で利用しても、上限以上は引き出せない。同社は「事業開始前から、監督官庁に相談し、所要の助言を受けてきた」「業界団体や監督官庁と相談しながら慎重に拡大してきた」として、パチンコ店へのATM導入は、業界を所管する警察庁も了解済み、との認識を示す。

同社は業績のほとんどをパチンコ店内ATMが占めており、撤去が進めば「事業継続は難しくなる」という。「ATMと依存の因果関係は、科学的に証明されていない。少なくとも民間の事業を制限するに足る知見はない。正しい検討が進むことを望んでいる」としている。【秋山惣一郎】