歴史的な一戦の裏側に迫る連載「G1ヒストリア」は、13、14年ヴィクトリアマイル連覇のヴィルシーナを取り上げる。牝馬3冠全てでジェンティルドンナの2着に敗れた悔しさをバネにつかんだ13年と、敗戦続きから復活した14年。当時の思い出を友道康夫調教師(59)が振り返る。
友道師は少しだけ目線を上げた。「あ~、ホッとしたかな」。ちょうど10年前。“シルバーコレクター”ヴィルシーナは13年ヴィクトリアマイルで念願のG1初制覇を果たした。ゴールした瞬間、師にはうれしさよりも安堵(あんど)の感情がこみ上げていた。
「ずっと2着で、やっとG1を勝てたんだという感じ。ジェンティルがいなかったら牝馬3冠だったからね。エリ女もどしゃぶりで…。悔しい思いをした」
12年桜花賞、オークス、秋華賞と牝馬3冠は全てジェンティルドンナの2着。その宿敵が不在だった同年エリザベス女王杯もレインボーダリアの首差2着と苦汁をなめた。そんな中でつかんだG1のタイトル。大魔神・佐々木主浩オーナーもこれがG1初制覇で「夜遅く…いや、朝早くまで飲みました(笑い)」と喜びを共有したという。
友道師にとってヴィルシーナは特別な存在だ。02年に友道厩舎が開業。預託されると決まった第1号の馬が同馬の母ハルーワスウィートだった。
「生まれた時から尾がなくて。良血だったけど、勝己さん(吉田勝己氏)から『やりなよ』と言ってもらった。その子どもで初めて重賞を勝てたし、G1を勝てた。思い入れは深い」
そんな勝利からまた敗戦が続く。今度は惜敗でなく惨敗。違う悔しさを味わった。しかし、1年後。見事に連覇達成で復活を遂げる。
「前哨戦の阪神牝馬S(11着)でオーナーにお願いして、次につながるように馬群の中で競馬をさせてもらった。気で走る馬だし、スイッチを入れてもらおうと。本番でまさかハナに行くとは思わなかったけど、気が乗ってたし良かった。1回目とはまた違う感情だったけど、うれしかった」
そんな名牝ヴィルシーナは母となり、初子ブラヴァスが重賞制覇(20年新潟記念)するなど、多くの有力馬を輩出している。「この馬の子どもでG1を勝ちたいね」。今週のヴィクトリアMには娘ディヴィーナが出走予定だ。師の夢である母子G1制覇なるか。【藤本真育】
◆ヴィルシーナ 2009年3月5日、北海道安平町、ノーザンファーム生まれ。父ディープインパクト、母ハルーワスウィート(母の父マキャヴェリアン)。馬主は横浜ベイスターズで守護神を務めた大魔神・佐々木主浩氏。栗東・友道康夫厩舎所属。通算21戦5勝。G1は13、14年ヴィクトリアMの2勝。総獲得賞金は4億6079万5000円。







