コロナ禍の東京五輪開幕まで今日3日で50日を迎えた。大会組織委員会の橋本聖子会長(56)が2日、日刊スポーツの単独インタビューに応じ、「中止、再延期はない」と断言した。来月23日に迫った開幕を前に選手、関係者のワクチン接種や新型コロナウイルス対策が世間に理解されはじめたことが、開催に前向きな世論が増え始めた理由と分析。観客上限数の決定時期は20日まで延長された緊急事態宣言明けの6月中とする認識を示した。そこで有観客が決定しても感染者数が急拡大すれば、大会直前や大会中でも無観客に切り替える用意があることを明かした。【聞き手=三須一紀、木下淳、近藤由美子】

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―先月「中止すべき」が6割程度だった報道各社の世論調査が、最近では中止と開催支持が拮抗(きっこう)する調査結果も出始めるなど、わずかだが支持する声も増えてきた

「国内のワクチン接種率が上がりつつあり、それなら安心して開催できるのではという国民の声が大きくなってきたように思う。私が知っている厳しいご意見だった方も、だいぶ変わってきた」

―なぜか

「プレーブック(規則集)第2版がなかなか(国民に)理解してもらえなかった。だが、国際オリンピック委員会(IOC)が海外からの選手団、関係者へ相当強くワクチン接種を促している。選手村滞在者の8割が接種する。(組織委も)検査回数やバブル方式など感染対策を説明してきた。それが国民に伝わってきたのだと思う。医療体制も縮小してきて今後、地域医療に支障をきたさないことが分かってもらえるようになると、さらに理解されてくると思う」

―中止はないか

「はい。そうですね。東大のある教授が、開催した場合に無観客でやれば(開催しない場合と)感染者数がほとんど変わらないというデータを示した。だいぶ(国民の)理解も進んできたと思う」

―再延期も絶対にない

「再延期はできないですね。1年延期でも相当な対応、対策をしてきた。これ以上延ばすと、全ての競技場がもう既に他の予約が入っている。そもそも予約を1年間ずらしていただいたことも大変な作業。これ以上、迷惑をかけられない。選手村も用意できない。再延期はもう無理ですね」

―仮に感染爆発が起きたら開幕直前や大会中でも大会を中止する選択肢はあるか

「世界各国で大変な状況になり、ほとんどの国から選手団が来られなくなったら開催はできない。逆に言えば、そういうこと以外で中止にはならない」

―観客上限数の決定は宣言明けか

「そうですね」

―橋本会長はできれば観客は入れたい考えか

「政府が示す基準が全てです」

―6月に有観客を決めても開幕直前や大会中に感染者数のリバウンドが激しくなった場合、急きょ無観客に切り替えることもあるか

「無観客も覚悟していると言ったのは、そういったところだ」

―アスリートとしては観客がいた方が良いのか

「最高のパフォーマンスをするために日々鍛え、最高の『芸術作品』を作り上げてきているからこそ、多くの方に見ていただきたいという気持ちは強いと思う。一方でトップ選手たちは観客がいないことでパフォーマンスが低下することもないと思う」

―橋本会長は最近「他競技が有観客の中、五輪だけ無観客はどうなのか」と述べている。しかし、五輪で東京に集散する人流はその比ではない

「会場内でルール違反をした観客には退場してもらう。問題は会場外。そこでの規制は政府、東京都と一体で考えていきたい」

―いよいよ五輪開幕まで50日となった。心境は

「アスリートの健康を守り切ることが組織委の仕事。厳しい意見が選手の耳に入り、相当不安を感じていると思うが、安心して世界から選手に来てもらい、日本選手にも安心して準備に取り組んでほしい。万全の体制でバブルをつくり上げるので、安心してほしい」

◆橋本聖子(はしもと・せいこ)1964年(昭39)10月5日、北海道早来町(現安平町)生まれ。64年東京五輪開会式の聖火に感激した父善吉さんが聖子と命名。3歳でスケートを始める。五輪は冬季にスピードスケートで4度、夏季は自転車で3度の計7度出場。92年アルベールビル五輪女子1500メートル銅メダル。95年参院選自民党比例区で初当選。19年9月から21年2月に組織委会長に就任するまで五輪相を務めた。

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