【初公開】朗希、種市、美馬…ロッテ面々の素顔/担当・金子真仁記者の3年間〈前編〉

ロッテ担当記者としての3年間を終えた金子真仁記者。期間中の優勝はなりませんでしたが、歓喜の時に備え、いくつものエピソードを蓄えていました。日々のちょっとした話も含め、世に出し切れなかった舞台裏を時系列で全3回で公開します。今回は前編。

プロ野球

19年10月18日。船が見えるホテルでのモーニングコールは野太かった。柳沼強スカウトからの着信。ロッテは前夜のドラフト会議で大船渡・佐々木朗希投手の交渉権を獲得した。「おめでとうございます」「ありがとうございます。井口監督、すごかったね。ところで、佐々木君のことでちょっと聞きたいことがあって…」。希代の逸材を追うこと7カ月。私の今後も変わっていく予感がする。

その数日後。群馬県での高校野球関東大会取材を終え、JR大宮駅で上越新幹線を降りる。ホームのベンチで記事を書いていると、同じ現場から帰ってきたであろう榎康弘スカウト(現スカウト部長)が向こうからやって来た。なぜか握手を求められる。「来年、ロッテ担当でしょ?」。えっ、聞いてないんですけど。「いやいや勘だけど、そうなるんじゃないの?」。予感、深まる。

入団選手発表会で笑顔を見せる、前列左からドラフト3位国士舘大・高部瑛斗、1位大船渡・佐々木朗希、2位東洋大・佐藤都志也。後列左からマーくん、育成2位慶大・植田将太、5位法大・福田光輝、井口資仁監督、河合克美オーナー代行、4位専大松戸・横山陸人、育成1位北翔大・本前郁也=2019年12月

入団選手発表会で笑顔を見せる、前列左からドラフト3位国士舘大・高部瑛斗、1位大船渡・佐々木朗希、2位東洋大・佐藤都志也。後列左からマーくん、育成2位慶大・植田将太、5位法大・福田光輝、井口資仁監督、河合克美オーナー代行、4位専大松戸・横山陸人、育成1位北翔大・本前郁也=2019年12月

やはりロッテ担当の命を受け、1年が始まった。佐々木朗希投手の入団もあり大勢の報道陣が集結。合同自主トレの初日は、座学から始まった。異例の“握手研修”も行われた。記者も選手たちと握手。ドラフト2位、佐藤都志也捕手は両手で包み込む、まるで絹のような握手だった。後日、尋ねた。「昔からああでした。主将とかやると、試合前に握手するじゃないですか。お互い敬意をもってやりたいし。握手って人に与える第一印象の点ですごく大きいと思うんです。でも、試合が始まったら違います。戦(いくさ)ですから」。目が燃えていた。

ロッテ藤原恭大外野手の自主トレ公開を取材する報道陣の背に振り込む平沢大河内野手=2020年1月(撮影・金子真仁)

ロッテ藤原恭大外野手の自主トレ公開を取材する報道陣の背に振り込む平沢大河内野手=2020年1月(撮影・金子真仁)

ロッテ浦和球場で藤原恭大外野手が自主トレを公開した。報道陣が集まる場の片隅で、平沢大河内野手が黙々とバットを振っていた。藤原と同じようにドラフト1位入団した甲子園のスターは、なかなか結果が出ずに存在感が薄れていた。でも、平然としたものだ。「逆に1人でやらせてくれたほうが楽です。(報道陣が集まって)うらやましいなとかは本当になくて。1人で集中してやりたいです」。プロだなと思った。

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1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。