今回は先日行われたクラブワールドカップ(クラブW杯)について見てみたいと思います。まず賞金面ですが、報道によると総額で約1650万ドル(約18億1500万円)が賞金として配分されたとのことでした。


(1)優勝 500万ドル(約5億5000万円)

(2)準優勝 400万ドル(約4億4000万円)

(3)3位 250万ドル(約2億7500万円)

(4)4位 200万ドル(約2億2000万円)

(5)5位 150万ドル(約1億6500万円)

(6)6位 100万ドル(約1億1000万円)

(7)7位 50万ドル(約5500万円)


日本から唯一参加した鹿島アントラーズの経済的な影響面を見てみると、クラブの売上としては50億円前後になりますので、優勝すると約10%が稼げるという見方ができます。売上利益の部分では、50億円近い売り上げに対して利益がわずか2~3%であること考えると、実質1、2億円という数字になりますから、優勝賞金とまではいかないまでも2位、もしくは3位の賞金がクラブにポンと入ってくることを想像すると非常に大きな影響がある大会だったと言っても良いのではないでしょうか。

同時に決勝進出を逃した南米王者のリバープレートの経営陣にとってみれば、クラブの売り上げとしては75億円前後ですが、利益率が鹿島同様だとすれば非常にダメージの大きなPK戦による敗退となってしまったことになります。

一方で優勝したレアル・マドリードは900億円前後の売り上げがあるメガクラブで、現地の報道によれば選手1人当たりに優勝賞金として10万ユーロ(約1300万円)を用意しているとありました。25人の選手が登録されておりましたので、これだけでも約3億2500万円という金額になります。仮に鹿島アントラーズが出だしで得点し、そのまま逃げ切っていたら…。

レアルが3位決定戦に回り、そこで勝利したと考えてもクラブの規模から、賞金は約2億7500万円ですから、チームとしても選手としても全然「うま味がない」結果となってしまうことになります。

優勝すれば、チームの売り上げという利益面では大きくないかもしれませんが、今回で終わってしまうと言われている大会史上初の3連覇という箔(はく)がついた形で終わることができ、その歴史にチームの名前が残ります。

ハーフタイムには(事実確認はしておりませんが)きっと経営陣から大きな激励があったに違いありません。選手だけでなく監督・コーチ人などのスタッフの勝利給や、その他関係各者の移動費などの支出を考えると、大きな負債を負うという不名誉な結果に終わっていたかもしれません。

この大会はどうやら新しく生まれ変わると報道されており、参加クラブ数が24チームに増加するだけでなく、4年ごとの開催になるなど大刷新を予定しているようです。これは2019年に行われるFIFA会長選を睨んだ現会長の働きもあるようで、非常に政治色が強いと受け止められてもおかしくはありません。

ちなみに3大会分(12年間)のスポンサー総収入額は250億ドルとも報じられており、日本円で2兆7500億円にもなる計算になります。Jリーグと共にトヨタカップという名前で歴史を刻んできた大会。この世界一決定戦とも言える試合を毎年年末に寒い国立競技場で見て育った我々日本のフットボールファンにとってみれば寂しさを感じてしまいますが、同時に今や世界規模に発展している巨大なフットボール市場に対して日本企業のビジネス面の成長と追随が求められていることのようにも感じます。

次回はいよいよ目の前に迫った移籍マーケットの最新情報とファイナンシャルフェアプレーの状況などについてお話ししていきたいと思います。【酒井浩之】

(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)