世界中から人が集まるニューヨークは活気にあふれていた。きらびやかな電飾看板が目立つマンハッタンの繁華街、タイムズスクエア付近は夜になっても大勢の人が行き交っていた。アルゼンチンとスペインのユニホーム姿のファンの姿も目立つ。いよいよW杯はこの地で決勝戦を迎える。

スペイン対アルゼンチン。勝ち上がった2チームは、欧州選手権王者対南米選手権王者という顔合わせとなった。前評判通りのカードと言える。その2チームの戦いを振り返った時に、90分で両者に負けていないチームがある。そう初出場のカボベルデだ。

1次リーグH組初戦でスペインを相手に0-0と引き分けた。40歳GKボジニャが次々とビッグセーブをみせ、優勝候補にゴールを割らせず一躍注目された。そしてグループ2位で決勝トーナメント進出を果たすと、1回戦でアルゼンチンを相手に打ち合いに挑んだ。延長戦の末に2-3と敗れたが、その戦いぶりはあらためて称賛に値する。

大西洋に浮かぶ小さな島国の大躍進としてクローズアップされた。しかし、小さな離島の選手たちが一致団結して頑張った、という漫画のようなストーリーではない。見落とせないのは「ディアスポラ(diaspora)」。古代ギリシャ語で「離散」を意味し、故郷から離れた国外居住者を指す思想的言葉。カボベルデは多くの選手が故郷を離れた親のもと、ポルトガル、オランダ、フランスなどで生まれ育った2世だった。

今大会を振り返れば、この「ディアスポラ」が1つのキーワードとなるだろう。キュラソーは26人中カリブの島で生まれた選手はわずか1人だった。カタールは10カ国の国籍を持つ選手で戦っていた。また、フランスの中心選手、オリセはロンドン生まれのロンドン育ちだが、母親の出身地フランスを選択。モロッコのハキミも同様にマドリードの出身である。

出場チームが32から48チームに増えたこともあり、今大会は1248人中289人が「ディアスポラ」選手だった。その割合は前回カタール大会の16・5%から23%に跳ね上がった。

これが意味することは、移民の動きが活発化しているということ。高度な技術を持つ人は活躍の場を求め、どんどん国境を越えていく。また、海外で稼ぎたいとチャンスを求める人も多いだろう。研究結果によると、世界の人口の4%は出生地と異なる国で暮らしているのだという。

アメリカは「人種のるつぼ」と呼ばれてきた。異なる人種が多様性を持ち込み、さまざまなアイデアや価値観を生み出し、変化を続けている。その象徴となるニューヨークで26年のW杯が幕を閉じる。今の時代を照らすような大会になったのではと思う。【佐藤隆志】

【イラスト】W杯決勝トーナメント4強出場国の詳細データ
【イラスト】W杯決勝トーナメント4強出場国の詳細データ
【イラスト】W杯北中米大会勝ち上がり(日本時間7月16日現在)
【イラスト】W杯北中米大会勝ち上がり(日本時間7月16日現在)