サッカー現場発

町田手掛ける定食屋、赤字でも子ども無料にした理念

FC町田ゼルビアが運営するレストラン「ゼルビア×キッチン」が9月28日に5周年を迎え、5日までキャンペーンを実施している。“サッカークラブが手掛ける町の定食屋”として親しまれ、選手と市民の交流の場にもなっているが、「クラブハウスがない」というマイナスをカバーする逆転の発想から誕生したものだった。

FC町田ゼルビアが運営する「ゼルビア×キッチン」の外観。練習後の選手も利用している(C)FC町田ゼルビア
FC町田ゼルビアが運営する「ゼルビア×キッチン」の外観。練習後の選手も利用している(C)FC町田ゼルビア

アスリートは練習後すぐに食事をとるのが理想とされるが、町田にはクラブハウスはおろか、専用の練習場もなかった。そこで選手に食事を提供する場として15年に生まれたのが「ゼルビア×キッチン」。トップチームの選手は無料で食事ができ、新型コロナウイルス流行前はアカデミーの選手もそろって利用していた。地元でとれた食材を使用し、健康的な食事を市民に提供することで、地域貢献の役割も果たしてきた。

町田市での認知度が上がると、活動は一定食屋の範囲を超えたものになっていった。昨年は町田市からの提案を受け、市内の中学生が注文するランチボックスにコラボメニューを提供した。東京五輪を控えた空手のインドネシア代表チームが町田市でキャンプを行った際には、宗教上の理由で豚肉が食べられない選手たちに最大限配慮したメニューを用意した。

新型コロナウイルスが流行し、市内の学校が休校となった今年3月には、忙しい保護者の役に立とうと、小学生以下無料キャンペーンを展開した。77年に少年サッカーの選抜チームとして発足した「FC町田」がクラブの母体。今もクラブ理念の1つに「次世代を担う子どもたちの健全な育成と夢の創造に貢献するクラブであること」とある。マネジャーの近藤安弘さんは「正直赤字でした」と話すが、「我々は何か物事を起こすとき『子どもたちのためになるか』と考える。今のタイミングで何をしようかと議論したとき『保護者が昼ご飯をつくるのは大変だ。お子さんを無料にしたら、気晴らしになるのでは』となった。すんなりと決まり、意見が割れることもなかった」と胸を張る。

今年9月には、「ゼルビア×キッチン」に新たな管理栄養士を迎えた。トヨタ自動車陸上部でも栄養士を務めた、日本に300人弱しかいない「公認スポーツ栄養士」の資格をもつ浜野純さん(48)だ。現在はレギュラーメニューの改良に取り組んでいる最中だという。食を通した地域貢献は、まだまだ拡大していきそうだ。【杉山理紗】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)


◆ゼルビア×キッチン 東京都町田市野津田町919。営業時間は午前11時から午後4時で、定休日は火曜日と年末年始。電話042・810・3333。5周年を記念して、5日まで割引キャンペーンを実施している。

町田市でキャンプを行った空手のインドネシア代表チームを迎えた際は、豚肉を抜いたメニューを用意した(提供:町田市)
町田市でキャンプを行った空手のインドネシア代表チームを迎えた際は、豚肉を抜いたメニューを用意した(提供:町田市)

日刊スポーツのサッカー担当記者が取材現場の空気を熱く伝えます。

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