天才のサプライズトークショーには、チームを愛する思いがあふれていた。北海道コンサドーレ札幌MF小野伸二(43)が16日に札幌・宮の沢で行われたファンイベント「サポーターズデー」のステージ上に突然登場した。ステージイベントは予定されていなかった時間帯。1人で座り込むと、最初はマイクも持たず、前方のサポーターに向けて「語りますか」という軽いノリ。手元にマイクが届くと、約13分間のトークショーがスタートした。
チームは前日15日のホーム新潟戦で0-1で敗れ、2連敗を喫した。試合後にはサポーターからブーイングも起こった。小野はメンバー外だったが、チームの思いとして伝えたい言葉があったようだ。
「みなさんに悲しい思いをさせてしまっていると思いますが、温かく見守ってくれることが選手にとってもありがたいし、これからも変わらず、その気持ちだけは持って欲しい。たくさんの方がスタジアムに来てくれると選手たちも、もっともっと気持ちも高まる。これからも後押しをお願いしたい」と呼びかけた。
小野は当時J2だった14年に札幌入り。19年夏にJ2琉球に移籍するも21年に復帰して、今季札幌で通算9シーズン目を過ごしている。キャリアで在籍最長のクラブだ。そんな札幌への愛を語り始めた。
「北海道という第2の故郷じゃないですが、僕にとってもなかなか1チームに長くいることがなかった。長くいるのは土地の良さや空気、みなさんの人柄だったり、そういうものが全てあってのこと。静岡出身ですが、北海道が長く僕をここにいさせてくれていると思うとうれしい。長くやらせてもらえた部分をこれから恩返しできるように、選手を含めていろんなことでみなさんに恩返しできるように。末永くよろしくお願いします」と、札幌との縁を大切にしたいと感じている様子が伝わった。
「ダメな試合はブーイングして全然OK。温かいブーイングをしてください。選手には響く。負けるために試合している選手は1人もいない。みなさんお金を払って見に来てくれているのだから、僕たちはそういう人たちがいなければ、ピッチに立つこともないし、プロサッカー選手としての価値もない。みなさんも甘やかすことなく、ダメなものはダメと伝えてくれた方がうれしい」。札幌はリーグ戦直近5試合未勝利。結果が出ないことによるサポーターの不安や不満に理解を示す。ただ、求めたのは共闘。クラブの今後の発展を願い、目指しているからだ。
その後、チーム最年少DF西野奨太(19)や、海外移籍を表明したMF金子拓郎(25)をそれぞれ隣に座らせてトークを展開。ぜいたくな時間だった。
小野の言葉の影響力はとても大きい。ベテランが札幌にいることの意味を、あらためて感じた。【保坂果那】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)