この男の頭に「引退」の2文字はないようだ。ガンバ大阪のMF遠藤保仁(39)が、前人未到の公式戦1000試合出場まであと17に迫った。日本代表やJリーグで数々の記録を持つが、年齢を重ね、日本代表のピッチも遠のいた。だが本人は現役続行どころか、代表復帰も狙っているという。今回の不定期コラム「ぜじんが行く」は遠藤の仰天プランに迫った。

昨年末、4年ぶりに遠藤と会った。知り合ったのは20年前だが、主戦場が大阪と東京のため、会う機会は少ない。

遠藤 のぜじん(私の名前です)久しぶりだね。代表じゃないと会えないね。そのうちまた会えるよ。

ぜじん えっ、関東のJクラブに移籍するの?

遠藤 (笑いながら)のぜじんも、オレがもう代表に戻れないと思ってるの? 秘策があるから待ってて。まあ、オレがもう現役引退したと思ってる人もいるくらいだから。

その「秘策」がずっと気になっていた。遠藤は30代中盤から「疲労回復にもう1日余分にかかるようになった」と言い、年齢的にも体を酷使できない。代表とクラブの両方を戦うのは難しい。しかも森保ジャパンでは中島、南野、堂安ら若手が台頭しており、遠藤はハリルジャパン時代から呼ばれていない。

今季開幕後、その言葉の意味を聞いてみた。

遠藤 ずっと代表にいるのはもう難しい。でも短期決戦なら代表に戻るチャンスはあるよ。22年カタール・ワールドカップ(W杯)だね。21年の1年間、22年のW杯メンバー発表までが勝負だね。その時の出来がメンバー選考に響くからね。ずっと呼ばれなくても最後の最後に滑り込めば勝ちだから。他にもいろんな要素が絡むから、それは自分で考えてみて。

ということで、遠藤がW杯メンバーに選ばれる理由考えてみた。<1>遠藤のパフォーマンスが代表レベルであること<2>代表チームがバラバラ<3>中盤でけが人が出たり、代表メンバーが不調<4>リーダー不在<5>ファンも含め、サッカー界全体で遠藤を求める声が拡大する<6>短期決戦で右足の飛び道具(FKキッカー)が必要<7>森保監督がベテランの存在を必要とする-。

もし私が代表監督なら、本大会には経験豊富な選手を1人は入れたいと思うだろう。W杯ロシア大会のベルギー戦終盤、ベンチに遠藤というコマがいたら、もっと余裕を持ってボール回しができただろう。いかなる場面でも緊張せず、難しいことを考えない。「鈍感力」。これこそが遠藤の最大の魅力だ。

以前、遠藤夫人からこんな話を聞いたことがある。「私が長文のLINEを送っても、絶対1行を超える返信をしてこないんです。『うん』『違う』『9時』(帰宅時間を指す)とか。『もっと長いメールを送って』と言ったら、『9時に帰る』でした。これも1行を超えないんですけどね」と笑った。

そんなマイペースで面倒くさがり屋の遠藤だが、ここぞの場面では家庭でも頼りになる男だ。07年に遠藤と食事の約束をしていたが、当日キャンセルされた。「ごめん。嫁が妊娠してて、体調悪くなったから今回は会えない。今度飯おごるわ」。それから11年。「まだ飯おごってないね。今度王将でギョーザおごるわ」ときた。ビール片手に、代表復帰プランをゆっくり教えてもらおう。【盧載鎭】

◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、ソウル生まれ。88年に来日し、96年に入社。21年間サッカー担当、2年間相撲担当。2児のパパ。