新型コロナウイルス感染拡大の影響で、Jリーグは身動きが取れない状況になってきた。活動休止中のクラブの選手は、かつてないストレスを抱えて自宅待機を続ける。一方で通常に近い環境で練習を続けるクラブもある。それぞれの思いや現状を取材した。

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緊急事態宣言の対象地域に入った大阪府。宣言から2日後の9日午後、ガンバ大阪とセレッソ大阪の両クラブは、ともに「当面の間、チームの活動休止延長」を発表した。

G大阪主将のDF三浦弦太(25)は「リーグ戦再開の日程もまだ決まらず、試合ができない難しい状況が続くが、まずは感染拡大を抑えることが最優先。みんなで感染拡大を防ぐため、一緒にこの困難を乗り越えましょう」。C大阪主将のMF清武弘嗣(30)は「感染症が早く収束する事を願い、Jリーグが再開する時まで我慢強くみんなで頑張っていきます」などとメッセージを出した。

本来ならG大阪は14日に練習再開を予定し、選手1人が新型コロナウイルスに感染したC大阪は、最短で11日からの再始動を模索していた。だが国内の感染者がさらに増え、ともに休止期限は発表しなかったものの、今月中の活動を見送る方向だ。

三浦の談話にあるように、そもそもJリーグの再開が何度も延期になっており、いまだに結論が見えてこない。現段階で決まっているのは5月27日までの全公式戦の開催延期で、同30日以降の開催は未定ということ。陸上選手が距離を明かされていないレースに臨むような心境かもしれない。

3月下旬から活動を停止したチームも多く、G大阪の多くの選手は「自宅での練習では限界がある。時差や分割出勤で3密(密閉、密集、密接)を避ける工夫をするので、何とかクラブ施設を使った自主トレができないか」と、自宅待機する現状への不安を口にしているという。一方で「外に出ることで、自分や家族が感染する危険性が生まれる」と活動休止の重大性も理解する。当然だった日常を取り戻せないストレスがそこにはある。

C大阪は1日に、GK永石拓海(24)がクラブで初めて新型コロナウイルスに感染したことを発表。森島寛晃社長(47)は公式戦の再延期が8日に発表されたことを受け、翌9日午前、ウェブを使ったミーティングで選手らに「試合再開まで長引くかもしれないが、自覚ある行動をとって備えてほしい」と呼びかけた。選手出身の社長らしい配慮だった。

自宅待機中のC大阪の選手は日々、パソコンの画面を通してコーチが指示するフィジカル練習がノルマとされ、個々に別メニューも与えられている。危険が伴う夜間のランニングなどは禁止。消毒作業が必要だった関連施設は、現時点でも使えない状態だ。一部選手は「今の練習量では足りないので、どれだけ自分で工夫して練習できるかが重要」と前向きに話しているという。

活動休止はJクラブだけではなく、日本協会に所属する各代表の指導者も同じだ。ある世代を預かる関係者は「今は散歩で外出する程度。家族と自宅にいることしかできない。こんな経験は予想できなかった」。代表候補選手に直接連絡をとることも自重しており、自宅での仕事は限られているという。

一方でサンフレッチェ広島やサガン鳥栖などは細心の注意を払い、非公開で練習を続ける。J3ロアッソ熊本も通常通りの練習態勢を貫く。熊本の関係者によると、選手の意向を調査したところ「休む方が精神的によくない。それなら練習を続けたい」という結論になった。外出、外食や地域外の知人との接触も注意喚起しているという。

長期連休前最後の練習となった3月27日に、G大阪宮本恒靖監督(43)は「100%の緊張感を続けるのは難しい。(オフに入って)1度下げて、もう1回上げていく」と話した。出口が見えない感染症との戦いは、いつまで続くのか。選手らの心の消耗が心配される。【横田和幸】