【アルワクラ(カタール)5日】日本代表のJOKER(ジョーカー)は卒業。MF三笘薫(25)は、世界に通用するエースへ進化を遂げる。
試合後のミックスゾーン。目からは自然と、あふれるものがあった。「PKを蹴った責任はあるので。迷惑を掛けたので」と言った。2番手で臨んだPK。ゴール左へ蹴り込んだが、相手GKに阻まれた。
「悔しさしかないです。いろいろな人が…選手、ベテラン…、僕も含めて、思いがあったので。自分が蹴るべきだったのかなというのはちょっと思います」
おえつが止まらなかった。肩を落とし、目は焦点が定まっていなかった。
ただ、「今後の日本代表を引っ張っていく思いはあるのか?」と問われると、「いやいや、それは思っています。そういう存在にならないといけないと思います」。
涙声の中に、力強さがにじみ出た。
ジョーカーとして、存在感を発揮した大会だった。大金星を挙げた初戦のドイツ戦では後半30分に、左サイドでドリブルを仕かけ、相手2人を引きつけ、堂安の同点弾のきっかけを生んだ。第3戦のスペイン戦は1-1の後半6分に、ゴールラインを割ろうかという、1ミリの世界で左足から田中の決勝弾をアシスト。1次リーグ3試合は、全て途中出場。日本の切り札として、試合を変える男であり続けた。
ベスト8をかけた試合でも、誰もがその姿を期待した。クロアチア戦でも途中出場。ただ、ジョーカーは鳴りを潜めた。
「やっぱり試合に入るのが難しくて、徐々に徐々に入りましたけれど、チャージを取りに行ききれなかったところは悔いが残るし、そういう実力だったなと感じているので…」
左サイドからドリブルを仕かけようと試みても、すぐにカバーに入られ、持ち前のドリブル突破はかなわなかった。
「自分が行き切れれば。自分のミスが多かったし、相手が2人来ても振り切らないといけないところもありましたし、そこで行けなかったことは、まあいろいろありますけれど。そういうところからと…」
唇をかんだ。
世界の壁。
「なんですかね。ゴール前の怖さみたいなところは感じたので。それは僕たちが与えられているのかはわからないけれど、やっぱりそういうところなんですかね」
所属クラブのブライトンが戦うプレミアリーグには、リバプールのオランダ代表ファン・ダイク、チェルシーのセネガル代表クリバリら世界最高峰のDFが多く在籍する。そういった猛者とのマッチアップから、レベルアップしていくしかない。
普段は寡黙で、クールな男が流した涙。
「僕よりも強い気持ちを持っている人に対しての申し訳なさです」
最後まで涙は止まらなかった。次のW杯では、試合開始から、最後まで、圧倒し続けるエースへ進化する。
「代表でもチームを勝たせる存在にならなきゃいけない。W杯で活躍できる選手、ベスト8に導ける選手がいい選手だと思う」
ジョーカーを卒業する。【栗田尚樹】