【フランクフルト(ドイツ)12日=栗田成芳】日本代表主将が、現状打破に「不言実行」を提唱した。フランクフルトMF長谷部誠(31)が、日本の対アジア勢4戦勝ちなしの苦境を重く受け止めた。「聖域」と位置づける代表が輝きを取り戻すために、元ドイツ代表主将のBミュンヘンDFラームのようにポジションに関係なく高いパフォーマンスを目指す。16日(日本時間17日未明)、古巣ウォルフスブルクとのリーグ開幕戦を迎える。

 高くそびえるフランクフルト・スタジアムの階段を、練習を終えた長谷部は軽快に駆け上がってきた。「もうドイツでは長いので」とブンデス9シーズン目を迎える。隣の練習場ではドイツ語で取材に応じ地元ファンに囲まれた。並行して選ばれ続ける代表では不動の主将。「試合を見られていないから話せないこともある」と前置きし、東アジア杯を未勝利で終えた若き代表について口を開いた。

 長谷部 今回だけじゃなく、シンガポールに勝てなかったところからの流れ。それは重く受け止めないといけない。今、アジアで4試合勝てていないわけだから。ただ立ち止まるわけにはいかない。自分はもっとどん底を味わっている。結果を出すことによって応援してくれる人も変わっていってくれる。代表は不言実行。それしかない。多くを語るよりも試合で見せて結果を出すしかない。

 不言実行。6月16日、W杯ロシア大会アジア2次予選シンガポール戦でまさかのドローに終わった。だが長谷部の知る「どん底」は5年前。W杯南ア大会直前の岡田ジャパン。4連敗で本番を迎えたときだ。

 長谷部 比べられないけど、そういうことを味わっていることは自分の1つの罪。代表という場所は勝つことが一番。そこは誰一人保証されている場所ではない。そういう競争の中でやっていく特別な聖域。サッカー選手にとって聖域だと思う。監督も大事かもしれないけど、自分たち選手がどれだけやれるか。自分はここで高いレベルでプレーして、代表に呼ばれるためにやるだけ。

 フランクフルトでは今季、当面は本職ではない右サイドバックを任される。中盤への思いを抑え、ピッチに立とうとしている。

 長谷部 どこのポジションというより、どこで出ても高いレベルでやれることを目指す。長いシーズンでは中盤で出ることもあると思う。そのときにいかに高いパフォーマンスを出せるかを考えている。だから今は目指せラームなんです。

 昨年のW杯優勝後、惜しまれながら代表引退を表明したBミュンヘンDFラームと同じ31歳。中盤でもDFでもハイレベルにこなす姿を、同じブンデスで見てきたからそう思う。代表主将は今やるべきことを、はっきりと描いていた。

 ◆フィリップ・ラーム 1983年11月11日、ドイツ・ミュンヘン生まれ。11歳でBミュンヘンの下部組織に入団。03~05年はシュツットガルトへ期限付き移籍。05-06年シーズンからはBミュンヘンでプレー。主に右サイドバックだが、右MFやボランチもこなす。ドイツ代表では出場113試合5得点。