今季最高のビッグマッチの第2ラウンドが間もなくやって来る。

新たなヨーロッパサッカー界の“クラシコ”になりつつあるレアル・マドリード対マンチェスター・シティーの欧州チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝第1戦は、“ゴラッソ(スーパーゴール)”連発のスペクタクルな展開となった。

2024年4月9日、マンチェスター・シティー戦でのレアル・マドリードのベリンガム(ロイター)
2024年4月9日、マンチェスター・シティー戦でのレアル・マドリードのベリンガム(ロイター)

■昨季の悪夢思い出させる3-3

アンチェロッティ監督はシステムを4-2-3-1に変更し、ロドリゴを左サイドハーフ、ビニシウスをセンターフォワードに配置するという新たな試みを行った。これが功を奏し、左サイドを起点に攻撃を仕掛けて決定機の数で上回るも、結果は3-3のドロー…。これはRマドリードサポーターにとって、昨季の悪夢を思い出させるものとなっている。

Rマドリードは昨季、マンチェスター・シティーと準決勝で対戦。今季同様にサンティアゴ・ベルナベウで行われた第1戦はビニシウスが先制するも、デ・ブライネに同点弾を許し、1-1の引き分けで終了した。

続くエティハド・スタジアムで行われた第2戦、Rマドリードはほとんど何もできないまま0-4で惨敗。大会2連覇の夢は儚く散っていた。

アンチェロッティ監督は試合後、「こういうことはサッカーで起こり得る。我々は前半、よりインテンシティが高く、クオリティーの高いプレーをした相手と対戦した。昨季(22~23年シーズン)は我々が優れていたが、今日は彼らの方が素晴らしかった」と振り返った。

そしてカルバハルも「最初から最後までシティーの方が良かったし圧倒された。それが結果に現れたんだ」と語り、クルトワは「最初に激しいプレスをかけられ、ボールを持った時に前に行けなかったし、相手が多くの人数をかけてきたのでペナルティーエリア内に押し込まれてしまった。立ち上がりはうまく持ちこたえたが、自分たちのプレーができず、チャンスを作れなかった」と完敗を認めていた。

敗因を挙げればキリがないが、中でもビニシウスは「グアルディオラの仕掛けた檻から逃れられなかった」「地球上で最もドリブル成功数の多い選手が、シティー相手に一度もドリブルを成功させることも、ゴールチャンスを作ることもできず、エティハドを去ることになった」とパフォーマンスの悪さを地元紙に指摘された。

また、アンチェロッティ監督は第1戦でハーランドをうまく抑えたリュディガーをベンチに置いたことで非難を浴びていた。

試合前、レアル・マドリードのアンチェロッティ監督(右)はマンチェスター・シティのグアルディオラ監督と抱き合う(ロイター)
試合前、レアル・マドリードのアンチェロッティ監督(右)はマンチェスター・シティのグアルディオラ監督と抱き合う(ロイター)

■公式戦ここ15試合負けない

昨季の悔しさを胸に今季をスタートしたRマドリードは、開幕時に守備の要であるクルトワとミリトンをそろって前十字靭帯断裂の大けがで失う不運に見舞われる。しかし、アンチェロッティ監督は守備面をうまくやりくりし、移籍金1億300万ユーロ(約164億8000万円)で加入したベリンガムを瞬く間にフィットさせた。

そして攻撃面に関して、前半戦はそのベリンガムが誰も予想しなかった爆発力を発揮し、後半戦はビニシウスとロドリゴのブラジル代表コンビが調子を上げたことで、好成績を残してきた。

今季ここまでの公式戦成績は44試合34勝8分け2敗。敗北はアトレチコ・マドリード戦の2試合のみで、ここ15試合負けなし。スペインリーグでは2位バルセロナに勝ち点8差をつけて首位を独走している。

このようにチーム力を高めて好調を維持しているものの、エティハド・スタジアムで待ち構えるマンチェスター・シティーは、Rマドリードが今季対戦する中で最強の相手であることに間違いないだろう。またこの試合ではクルトワとアラバをけが、チュアメニを出場停止で欠くことになる。

マンチェスター・シティーは昨年12月のアストン・ビラ戦の敗北を最後に、公式戦ここ27試合無敗をキープ。そして週末にリバプールとアーセナルが揃って敗れたことで、プレミアリーグ首位の座を奪還した。

けが人が次々と回復し、第2戦にはほぼベストの状態で臨むことができる。唯一の気がかりはストーンズのみで、第1戦に出場しなかったデブライネ、エデルソン、ウォーカー、アケがスタメン入りする可能性が高い。

4月9日、競り合うマンチェスター・シティのハーランドとレアル・マドリードのリュディガー(ロイター)
4月9日、競り合うマンチェスター・シティのハーランドとレアル・マドリードのリュディガー(ロイター)

■ブックメーカーはマンC有利

Rマドリードはマンチェスター・シティーとこれまで、公式戦(全て欧州CL)で11試合戦い3勝4分け4敗。しかし、アウェーでは0勝2分け3敗の3連敗中と、一度も勝ったことがない。

また、マンチェスター・シティーがエティハド・スタジアムで行われた欧州CLで最後に敗れたのは、18年11月のリヨン戦。それ以降、30試合28勝2分けと5年以上負けておらず、難攻不落の要塞と化している。

当然、大手ブックメーカー会社Bwinのオッズも、Rマドリード勝利4・75倍、マンチェスター・シティー勝利1・65倍と、ホームチーム有利になっている。

今季の補強費に目を向けると、Rマドリードが1億2950万ユーロ(約207億2000万円)であるのに対し、マンチェスター・シティーは2億5960万ユーロ(約415億3600万円)と約2倍。

そしてドイツの移籍情報サイト「トランスファーマーケット」による選手の市場価値合計は、Rマドリードが10・4億ユーロ(1664億円)で、マンチェスター・シティーは12・7億ユーロ(2032億円)となっている。

Rマドリードがあらゆる面で圧倒的不利と思われる状況の中、昨季のリベンジを果たすのか? それともマンチェスター・シティーが再びホームアドバンテージを生かして勝ち進むのか?

17日、欧州CL前々回と前回王者の対決に、世界中のサッカーファンの注目が集まることになるだろう。

【高橋智行通信員】(サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」/ニッカンスポーツコム)