阪神、ロッテで活躍した鳥谷敬氏(41=日刊スポーツ評論家)がアスリートに迫る「鳥谷敬VSパリ五輪の星」。第4回は陸上女子短距離界のエース格、児玉芽生(23=ミズノ)との白熱マインド対談です。7月のオレゴン陸上世界選手権では、400メートルリレーで11年ぶりの日本記録を更新しながら予選敗退。「世界との差」を埋めるため、心身両面で必要なピースとは-。【取材・構成=佐井陽介】
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鳥谷 世界陸上、お疲れさまでした。400メートルリレーで日本記録を出した後、「うれしかったけど世界との差を痛感した」とコメントされていましたね。
児玉 世界陸上や五輪は記録ではなく勝負の世界。日本記録を出しても組7着だったので。他国はバトンがうまくない分を走力でカバーしている。日本もバトンの技術だけでなく、個々の走力を上げていかないといけない。私の場合はまだ上半身の筋肉が全然で、そこが今の課題です。
鳥谷 短距離選手は腕なんかムキムキですもんね。
児玉 体幹周りの筋肉とか軸がないとブレる。世界陸上を通して、その部分の差も大きいと感じました。
鳥谷 女子短距離界(障害を除く)は12年ロンドン五輪以降、100メートル、200メートルの日本記録保持者でもある福島千里さんしか世界大会の個人種目に出場できていません。
児玉 私自身、日本記録や世界標準記録をどこか遠くて厚い壁だと感じすぎていたのかもしれません。日本の男子100メートルは1人が9秒台を出したら、一気に9秒台が増えた。女子ショートハードルの日本記録もそう。自分も「誰かが越えたから」という存在にならないといけない。技術面ではトップスピードの強化。私は日本人の中でも上半身が弱い方なので、そこを強化すればまだまだやれる。上半身に筋肉をつけた中でいかにうまく走れるかを見つけていきたいです。
鳥谷 福島さんと面識はあるんですか?
児玉 今年、声をかけていただいて話すようになりました。以前からあこがれの存在だった福島さんの記録を超えたいと思っています。
鳥谷 福島さんを超えるとなると、今後の目標は?
児玉 1歩1歩世界との差を埋めて、世界大会の決勝という舞台で走れるようになりたいです。今までは海外で試合をする経験がなくて「日本で何番」とか日本人の枠にとらわれていたというか…。海外遠征もして、まずは世界のトップとして戦う意識づけをしていきたいと思っています。
(後編に続く)
◆陸上女子400メートルリレー 日本は7月の陸上世界選手権に5大会ぶり出場。児玉は3走を任され43秒33の日本新記録も、1組7着に予選敗退した。2大会ぶり出場となった昨夏の東京五輪は43秒44で1組7着の予選敗退。児玉は2走を務めた。
◆児玉芽生(こだま・めい)1999年(平11)6月8日、大分県臼杵市生まれ。姉の影響で小学1年から陸上クラブへ。大分雄城台高校3年でインターハイ、国体で100メートル優勝。福岡大3年時の日本インカレ100メートルで日本歴代3位(現役1位)の11秒35を記録した。21年は日本選手権100メートル、200メートルで2冠。22年は日本選手権200メートルで優勝。21年東京五輪、22年陸上世界選手権で女子400メートルリレー日本代表。今春ミズノ入社。160センチ。