フォルティウスが出だしでつまずいた。
12日にスタートしたミラノ・コルティナ五輪(オリンピック)カーリング女子。日本は1つ上の世界ランク4位のスウェーデンに完敗すると、同8位のデンマークにも延長戦の末に惜敗した。「初戦から連勝して勢いに乗れば金メダルも」という私の勝手な皮算用もつまずいた。
スキップの吉村紗也香のショットがいつになく精度を欠き、氷の表面を掃くスイーパーも正確にストーンを導けないシーンがあった。山間部の会場の複雑な氷の変化に戸惑い、観客の歓声で仲間の声がかき消された。「硬くなってしまった」。初出場の吉村の笑顔が少しこわばっていた。
でもこれが五輪なのだ。同じ時間に中継されていたスノーボード女子ハーフパイプ決勝で、金メダル最有力のクロエ・キム(米国)が転倒して3連覇を逃すシーンを見た。経験豊富な女王でも勝負どころで失敗する。夢にまで見た4年に1度の大舞台。誰だって緊張で硬くなるのだ。
もっとも逆境からの粘り強さが彼女たちの強み。前回の北京五輪代表決定戦でロコ・ソラーレに敗れた後にスポンサー契約が終了。貯金を切り崩しながら、新たな支援先を探す苦労を味わった。チーム存続危機のどん底から五輪まではい上がったのだ。上位と顔を合わせるこれからが真骨頂、腕の見せどころだ。
大会前のNHKの特集番組で、練習の合間に彼女たちがスーツに着替え、企業を回って支援を訴えるシーンを見た。カーリングで社会に何を還元できるのか。自分たちの存在意義を必死に考えたに違いない。その経験はきっと大一番で心の支えになるはずだ。
06年トリノで女子7位入賞のチーム青森が「カーリング娘」として一躍注目を浴びた。その後、ロコ・ソラーレが18年平昌で銅、22年北京で銀メダルを獲得して、スポーツとしての面白さが広く認知されるようになった。昨秋、都内に東京辰巳アイスアリーナが完成。カーリングシートも常設され、初心者や子どもたちが笑顔で楽しんでいる。
カーリングが他の冬の競技と違うのは老若男女、世代を超えて楽しめるところだ。人と人をつなげて、社会を明るくする力がある。だからフォルティウスには最後まで笑顔で戦ってほしい。もちろんメダルだって期待している。【首藤正徳】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「スポーツ百景」)






