野球・ソフトボールと空手が、28年ロサンゼルス大会での五輪競技復活に向けて最初の関門を突破した。4日、同五輪の開催都市提案による追加競技の9候補が明らかになり、その中に両競技が入った。

他の7候補競技は、24年パリ大会でも行われるブレイクダンスの他にクリケット、ラクロス、フラッグフットボール、モータースポーツ、スカッシュ、キックボクシング。今後さらに絞り込まれて同大会組織委員会が国際オリンピック委員会(IOC)に提案。来年6月のIOC総会で正式に決定する見込みだ。

開催都市提案による競技追加は、昨年の東京大会から。相撲やチェスなど26競技が申し込み、15年6月には第1次選考でボウリングやスカッシュ、武術太極拳など8競技が選ばれた。

同年10月にはIOCに野球・ソフトボール、空手、スポーツクライミング、ローラースポーツ(スケートボード)、サーフィンの5競技を提案、16年8月に5競技の実施が決まった。

開催都市提案による競技追加は、開催都市で人気のある競技を実施して大会を盛り上げるのが狙い。野球とソフトボールは米国でも人気スポーツ。施設も既存のものを使えることなどから復帰を期待する声もあるが、そう簡単ではない。

東京大会でも実施決定までの道のりは険しかった。IOCに提案された5競技のうち、野球・ソフトボールと空手は日本の得意競技でもあり、人気もあった。「開催都市提案」として、当然のようにも思えた。

もっとも、スケボー、サーフィン、クライミングは競技としての認知度は高くなく、日本の得意競技でもなかった(結果としてメダルラッシュに沸いたが)。それでも、申請されたのはIOCの強い力があったからだ。

15年当時、各競技団体の組織委員会への働きかけ、PR活動が盛んだった。もっとも、国内で目立った動きのなかったサーフィンが当選。関係者から聞いたのは「IOCとISA(国際サーフィン連盟)の間で、話はできているから」。開催都市提案とはいえ、決定権を持つIOCの影響力は想像以上に大きかった。

スケボー、サーフィン、クライミングは、若者人気が欲しいIOCが強く推した追加競技。5競技を申請しても、個別審査では野球・ソフトボールと空手は落選の危機にあった。組織は5競技の「一括承認」を求めて「一括提案」した。

申請が承認されて5競技の実施が決まった後、当時の森喜朗組織委会長は「野球が入ってよかった。パッケージ(一括)のおかげ」と話した。落選危機にあった野球・ソフトボールを救ったのは、組織委の「一括提案」だったのだ。

120年ぶりの五輪復帰を目指すラクロスは、10人制から6人制へと大胆にルールを変更、アメリカンフットボールはNFLの支援を受けて5人制のフラッグフットボールで五輪を目指す。長い試合時間がネックだったクリケットも、2時間半程度のT20形式で五輪復帰を狙う。それぞれが試行錯誤しながら五輪への道を模索している。

世界野球ソフトボール連盟(WBSC)も、男女混合5人制の手打ち野球「B5」を導入するなどIOCを意識した取り組みも行っているが、それが28年ロス五輪での実施につながるのか。五輪復帰への道は、まだまだ険しい。(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)

21年7月27日、東京五輪 ソフトボール決勝 米国に勝利し優勝を決め、喜び合う上野(中央)ら日本ナイン
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