テニスの日本男子4人目のツアー制覇を成し遂げたダニエル太郎(25=エイブル)が7日、最新世界ランキングで自己最高の82位に躍進した。イスタンブール・オープン決勝で、同78位(決勝時)のマレク・ジャジリ(34=チュニジア)に7-6、6-4のストレート勝ち。松岡修造、錦織圭、杉田祐一に次ぐツアー優勝を飾り、27日開幕の4大大会、全仏オープン(パリ)の予選突破に弾みをつけた。

 勝利の瞬間、思わず取ったポーズがダニエルらしかった。ひざを折り、左腕を天に伸ばし、右腕は肩のところでV字のように構えた。まるで、戦隊ヒーローの勝利のポーズのようで、「マーベルのヒーロー映画の見過ぎで、意味分かんなく出てきた」。この自然体が大きな魅力だ。

 初優勝を飾った赤土のコートは自身の庭のようなもの。14歳で日本から移り住んだスペイン・バレンシアで、徹底的に戦略をたたき込まれたコートだ。ストロークでの安定感は天下一品。昨年から拠点を日本に戻し、改良を重ねたサーブとネットを武器に加え、34歳のベテランに競り勝った。

 頭角を現した12~13年ごろは190センチの体をもてあまし、ベースラインから大きく下がり、徹底的な守りのテニスだった。まだ20歳前半。「焦ってはいない。体ができあがるにつれて、攻撃を加えていきたい」。5年たち、守備をまだ主張するスペインのコーチと「親子みたいにけんかばっかり」で別れ、日本に戻った。

 日本のナショナルチームのコーチと、サーブの攻撃力アップ、フォアのフォームを改良。今年3月のBNPパリバ・オープン2回戦では、元世界王者のジョコビッチ(セルビア)を撃破するなど、躍進の予兆はあった。

 「夢のようなことだが、今までのプロセスが大事。優勝でも決して浮かれたくない」。一皮むけた長身、イケメンのダニエルが、大好きな赤土で花開いた。