アメリカンフットボール部の反則タックル問題で揺れる日大の教職員組合文理学部支部は20日、アメフト部の部長を務めている加藤直人文理学部長に「要望書」を提出した。

全文は以下の通り(原文まま)

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要 望 書

 

2018年6月20日

日本大学文理学部長 加藤直人 殿

日本大学教職員組合文理学部支部長 初見基

 

 去る5月6日,関西学院大学チームとの対戦中に日本大学保健体育審議会アメリカンフットボール部選手による危険タックルが行われました。その後日本大学にあってこの事件は,被害側からの申し立てによってはじめて問題化されます。さらにそれ以降マスコミによる報道の影響もあり,理事会の対応の拙劣さといった次元をはるかに越え,日本大学自体がそもそも抱えてきた構造的諸問題が広くに知れわたるにいたりました。

 事態は一運動部内の事件であるにとどまらず,いまや日本大学全体の体制が社会的に問われる局面となっています。さまざまなメディアを通じ,教育機関,あるいはそれ以前に人権・公正概念が確立した社会であればあるまじき信じがたい不法・非道徳的事例すら報じられています。こうして,日本大学そのものがいったいどのような大学であるのか,という深い疑念が大学内外に呼び起こされている,それが現状です。

 しかしこの未曾有な危機的状況にもかかわらず,本学最高責任者である田中英壽日本大学理事長はいまだに公開の場における謝罪,説明どころか,自らに降りかかる疑惑の否認すら行っていません。

 一方,加藤直人文理学部長においても,アメリカンフットボール部長としての職務範囲での動向は報道を通し伝わってくるものの,学部長としては,学部学生にも教職員にもそして社会にも,直接的・公的な発言を自身の口からいっさいしていません。5月・6月とも教授会に欠席している点は措くとしても,本来ならば臨時教授会ないし教職員集会を緊急に召集し,暫定的であれ学部長としての態度表明を示してしかるべきでした。

 5月31日に日本大学教職員組合から田中理事長に提出された「要求書」に対しては,9日間で文理学部専任教員の7割を越える190名からの賛同署名を得ました。他方,署名をされない教員からは,こうした働きかけは学部全体で学部執行部の主導のもとでなされるべきであるといったご意見もいただいています。両者に通底するのは,このままではいけないという切羽詰まった危機意識であり,それは本学部教員の圧倒的多数に共感されるものと強く想像されます。

 日本大学の学部長は教職員の直接投票にもとづき選出されています。大方の一般教員であれば在任期間中いちども相まみえる機会のない理事長,学長あるいは常務理事らと異なり日ごろ教育現場の近くにいるというだけでなく,また教育・研究者としての高い見識を有していると評価されたからこそ選出された学部長に,教職員は正統なる学部代表として学部運営の最高責任を委託しています。その学部長が,自学部の学生・教職員をないがしろにしていると見なされかねない態度をこうして取りつづけていることに,私たちは失望を禁じえません。

 私たち教職員組合の考えではいま問題になっているのは,本学の「統治構造」の歪みです。学生,教職員の声を汲み上げる回路をほとんど絶ったままになされる上意下達の,それも不透明な指令系統が,さまざまな弊害を生んでいると私たちは認識しています。そしてこのような本学の欠陥を,より民主的で開かれた構造へと非力にも変えられないできた,この現状に対して私たち教職員には多大な責任があります。さらにその責任の重さが,要職に就かれている加藤学部長の場合には,一般教職員の比でないのも当然です。

 加藤学部長ご自身が,本学副学長として,保健体育審議会アメリカンフットボール部長として,目下大学を揺るがせている事態に深甚なる責任を負うことはもっともよく承知されているとおりです。私たちは,その加藤学部長が,具体的にどのようにその責任を果たそうとしているのかの発言を待ちつづけておりました。しかし,まことに残念ながら,前述したとおり本日までその声は私たちのもとに届いておりません。

 ことここにいたり,私たち教職員組合文理学部支部は,現在まで無策と愚策でしか対応できていない大学理事会の失態を少しでも償うべく,以下の3点を本年6月中に実施するよう加藤学部長に強く要望します。

 

 1.文理学部在学生に向かって直接に,それが無理な場合にはヴィデオ・メッセージなどにより,教育機関である日本大学文理学部教職員は,学生側に立ち,事あらばつねに学生を守る心構えである旨を明言すること。

 2.なんら落ち度のない学生たちに今後見舞いうる不利益を最小限にとどめるべく,社会への訴えをあたうかぎりの手段を尽くして発すること。

 3.以上2点の実施とは別途に,学部全教職員を召集した緊急集会を開催し,本学の「統治構造」の歪みを正すための具体的な施策を決定し,日本大学本部に提出すること。

 私たちは,上述した学部長としての「責任」を,学生を守ることはもちろんのこと,理事として,副学長として,これまで現体制を支えその内情にも通じた立場であるからこそなしうる役割を果たすこと,すなわち,本学の抱える負の要因を包み隠さず明らかにし,そしてそれを取り除いてゆく方向を指し示すことにもあると確信しております。

 上掲3点がすみやかに実施されるよう,重ねて要望する次第です。

 

以上