アメリカンフットボールの関東学生連盟は10日、オンラインで臨時理事会を開き、違法薬物事件を起こした日本大(日大)を「当面の間の出場資格の停止」とした。9月2日の法大との関東大学リーグ1部上位「TOP8」開幕戦は中止。4つの処分理由を挙げ、クリアできた場合は1カ月後から出場を認めるものの、以後は「参考試合」となり、大学日本一決定戦「甲子園ボウル」出場は消滅した。日大側もこの日、覚醒剤と乾燥大麻を所持した疑いで逮捕された3年生部員の北畠成文容疑者(21)を「個人犯罪」と認定し、無期限活動停止処分を解除。関東学連に出場意向を訴えたが、認められなかった。
リーグ開幕まで、残り23日。関東学連が厳格な決断を下した。日大側から参加意向を示され、中村敏英監督から報告を受けたが、さまざま勘案し「現状では試合に出場させることはできない」と判断した。関係者によると、該当校の日大を除く理事で議論され、丁寧にポイントを押さえながら2時間超、話し合いが行われた。現段階で出場容認は難しい、との意見が大勢を占めたため、紛糾することなく協議は進行したという。
「当面の間の出場資格停止」とした理由には「逮捕者以外の潔白が保証できない」「責任の所在が明らかでない」など4点を挙げた。
処分に伴い、来月2日の法大との開幕戦は中止となった。単なる1試合にとどまらない。以降は各試合日の1カ月前を期限に4条件をクリアしたと判断された場合、途中参戦が許される。しかし扱いは「参考試合」だ。勝敗はつかない。大学日本一決定戦「甲子園ボウル」出場は消滅、最高でも1部下位BIG8との入れ替え戦に回ることになった。ないとは思われるが、相手から辞退されれば試合すら行えなくなる。
事態は一気に動いた。日大はこの日、アメフト部に5日前に科したばかりの無期限活動停止処分を解除。「部員1名による薬物単純所持という個人犯罪」と認定し「個人の問題を部全体に連帯責任として負わせることは、競技に真剣に取り組んできた多くの学生の努力を無に帰することになる」と決断した。9日まで2夜連続で緊急保護者会を開き、部員や保護者が出場を熱望。最後は大学側が連帯責任を避け、開幕まで既に1カ月を切っている中、近日中の練習再開を決めて備えに入っていた。
関東学連も、同じく連帯責任は求めない方針だったものの、容認できなかった。「これまで十分な事実の解明をなさず、かつ、責任の所在を明確化していないため、現段階では同部全体を処分せざるを得ず、連帯責任以前の問題」と大学側の姿勢を厳しく突き放した。
日大では18年に「悪質タックル」問題が発生。一連の騒動は社会問題化し、同年度内の公式試合出場資格停止処分を科されて下位に降格した。今回は「薬物事案という大きな社会問題。慎重に判断せざるを得ない」とされ、処分は「当面」にとどまったが、実質的にリーグ不参加相当の処分。今後は規律委員会が調査を進め、最終的には処分が追加される可能性まである。
<4つの処分理由>
(1)日大アメフト部側から、逮捕された部員以外の部関係者全員が違法薬物に潔白であると保証できない旨が示されたこと
(2)逮捕された部員以外の部の関係者に違法薬物を使用した者が存在している疑いが払拭できないこと
(3)再発防止策の提示ならびにその実施がなされていないこと
(4)部関係者(指導者、学生を含む)の責任の所在が明らかでないこと
◆日大フェニックス 1940年(昭15)に創部。55年に関東で初優勝。甲子園ボウルに初出場し、関学大と引き分けで優勝。過去34度出場で優勝21度は関学大の最多30度に次ぐ。ライスボウルは84年に初出場し、過去4度とも優勝。愛称は50年代に最強を自負した全日大の不死鳥倶楽部が由来で命名。チームカラーは赤。
◆TOP8 関東大学リーグ1部上位(最上位)。昨年優勝の早稲田大を筆頭に今季は法大、明治大、中央大、立教大、東京大、日大、慶応大が所属。8チーム総当たりのリーグ戦を行う。第2節の16日は東京ドームで早大―日大など4試合、最終節は11月23日に横浜スタジアムで開催される。優勝校は全日本大学選手権に出場(決勝が甲子園ボウル)できる一方で7、8位は1部下位BIG8との入れ替え戦に回る。
◆18年悪質タックル問題時の処分 5月6日の関学大との定期戦で問題が発生。同29日に関東学生連盟が当時の監督、コーチの「除名」処分を発表し、チームは条件付きの出場資格停止とした。6月26日の臨時総会で監督、コーチの除名が正式決定。日大は7月30日に臨時理事会を開き、両者の懲戒解雇を決定した。同31日に関東学連が出場資格停止処分の解除なしを決定。学連の検証委員会は日大のチーム改善報告書では再発防止の実効性や、組織改革が不確定と答申した。創部79年目で初の下位リーグ降格が確定し、公式試合への復帰は翌19年となった。


