北京オリンピック(五輪)のフィギュアスケート男子で94年ぶりの3連覇を目指す羽生結弦(27=ANA)が7日、当地で初練習を行った。

前日6日に中国へ入ったばかり。本番会場の首都体育館ではなく練習リンクで、いきなり前人未到のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に8回挑戦した。成功はなかったが、偉業達成へ「この五輪で上にいくためには絶対に必要」と大会初投入を明言した。ショートプログラム(SP)は今日8日に行われ、羽生は日本時間午後1時19分ごろ登場する。

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海外で「行方不明」とまで報道されていた羽生が、ついに姿を現した。そして跳んだ。4回転半。序盤は3回転ループやトリプルアクセル(3回転半)で体を温め、開始15分過ぎから半分を大技の練習に充てた。

(1)両足着氷(回転不足)

(2)両足着氷(回転不足)

(3)転倒(やや回転不足)

(4)抜け(2回転半相当)

(5)抜け(2回転半相当)

(6)転倒(曲かけの冒頭)

(7)転倒(最も惜しい形)

(8)抜け(1回転半相当)

あと少しで回り切れそうだった7回目を含め、到着翌日、練習初日から世界初成功を目指すジャンプに8度トライした。3度目の五輪へ、第一声は「すごく集中して練習できました」。公の場は昨年末の全日本選手権以来で「やはり4A(4回転半)の練習は、かなりやってきました」と最終調整の中身を紹介した。「やっぱり難しいなと思いながらも…でも、どうしても達成したい目標。自分自身が、この五輪で上にいくためには絶対に必要だと思っている。頑張ります」。4回転ジャンプ6種の中で、五輪で試されたことすらない唯一のジャンプが4A。それを武器として投入することをあらためて告げた。

続けて明かしたのは「まだ成功してません」。最後の追い込みでも壁は越えられなかったが「こっちに来て、感触はかなりいい。浮きもいいし、回転のかけ方もやりやすかった。まずは回転し切りたい」。人生初成功の場は大舞台にする。

4年前は66年ぶりの2連覇。今回は戦前のグラフストレーム(スウェーデン)以来94年ぶりが懸かる。「今までの五輪は、自分が練習してきたことや、しっかり降りてきたジャンプを出し切れば勝てる感覚でやっていた。今回はまだ成長しなくてはいけない部分がある状態」と表現。4回転半に挑むリスクと勝利をてんびんにかけた場合の判断を問われると「僕の中ではイコール」とした。成功も3連覇も遂げてこそ五輪だ。

前日の入国時は空港で防護服姿のスタッフに取り囲まれ、この日は練習リンクに記者30人だけの規制もかかった。取材時には英語や中国語も飛びかって混乱。やはり主役だ。「五輪の緊張感は特別。そりゃ緊張しますよ」と笑って、最後まで穏やかに初日を締めた。

一夜明ければ、もうSPだ。過去2大会とも首位発進して最高の輝きにつなげた。「4A、4Aと考えてしまうけどSPに愛情を持って」。午後1時19分、王者の3度目のオリンピックが幕を開ける。【木下淳】