新型コロナウイルスの世界的な感染再拡大の中、北京五輪は選手や大会関係者を外部と遮断する「バブル方式」を採用している。
その運用は昨夏の東京五輪よりはるかに厳格と言われる。現地で濃厚接触者に認定された日刊スポーツの木下淳記者(41)が、隔離生活の体験をコラム「北京の風」で詳細リポートした。
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私事ですが、濃厚接触者と認定されて隔離されていました。ホテル自室で7日間。新型コロナウイルス検査はすべて陰性で、本日ようやく現場復帰しました。
当地に入って3日目の2月1日、担当するフィギュアスケート会場の首都体育館にいると、携帯電話に中国番号から着信がありました。「まさか…」。このご時世ですから最悪を想定します。案の定、防疫担当者でした。「ホテルに戻ってください」。鳥肌が立ちました。ところが、早口な英語の中でも一向に「ポジティブ(陽性)」の単語が出てきません。少し落ち着いて聞くと、入国便の真後ろの席にいた外国人が陽性だったそうです。搭乗便名と席番を確認された上で「クロースコンタクト(濃厚接触)」と通告されました。
帰宿し、受けた主な指示は
(1)1月30日(搭乗日)から2月5日まで7日間、ホテル自室で隔離(無症状のため。症状次第では入院)
(2)食事はルームサービス
(3)PCR検査は口か鼻の選択制で、午前9時と午後9時の2回
(4)検温は午前9時と午後3時
(5)喉の痛み等あれば報告、など。不幸中の幸いは、先月24日にIOCが北京五輪のコロナ対策を緩和したことでした。それまで濃厚接触者は14日間の隔離が課されていたのです。
現在は7日間。活動できた最初の2日間も換算されるので、実質5日間です。1歩も部屋の外に出ませんでした。人生初。しかも4年に1度の冬季五輪で…。
食事は朝の軽食だけ無料で届けられ、昼と晩は有料のルームサービスです。とりあえず初日に韓国風チキンを頼んでみると、ミニサイズの唐揚げ単品(ケチャップ味)で128元(約2300円)…。ギョーザは何と5個で1750円です…。陽性の場合は3食が提供されますが、濃厚接触は自腹。これは破産する。防疫担当者に相談すると「そんなの部長と話しなさい(実際は『所属組織の上長と交渉してください』)」と一蹴されてしまいました。
検査は1日2回、ドアを開いて、口を開いて、喉の奥まで綿棒を突っ込まれます。いつも防護服の3人1組で来て、部屋前を消毒液まみれにして帰っていきます。タオル交換を頼むだけでもスタッフは完全防備。そのうち全自動配達ロボットしか来なくなりました。
開幕した4日には、午前6時にまた携帯電話が鳴りました。「マジか…」。検査結果は午前に受けると午後8時、午後は翌朝6時に出る運用です。覚悟しましたが、内容は「あなたは濃厚接触者です」。分かっとるわい! と英語で言えないので心の中で。翌5日には「隔離が終わったら、どこに行くの?」。俺の勝手だろ! も胸の内で。結局、感染はしていませんでした。出国前に自主的も含め3回、中国で12回の計15回。すべて陰性でした。
しかし、まさか五輪開催地まで来てテレビ観戦する羽目になるとは…。晴れて解放され「北京の風」を吸うことができました。今日だけは忘れよう、この国の大気のことは。【木下淳】
○…IOCのルールでは検査で陽性になった選手は棄権扱いになる。その場合の特別ルールは、競技によって異なる。フィギュアスケートの個人種目はフリーに進出した選手が棄権した場合でも繰り上げは認めない。スノーボードのハーフパイプなども抽選後の選手の入れ替えは認められていない。一方、ジャンプの団体は試技の1時間前まで入れ替えが可能。カーリングは1次リーグ開始後の選手の入れ替えは認めておらず、準決勝進出チームが棄権した場合は、次点チームが繰り上がる。
◆北京五輪のバブル方式 選手や大会関係者は到着した空港から外部との接触を完全に遮断した「バブル」内で隔離される。医療用マスクと毎日のPCR検査が義務付けられ、移動も組織委が用意した車両に限定される。東京では原則入国14日間を経過すればバブル外に出ることが認められたが、北京では認められない。選手が検査で陽性になった場合、隔離施設や病院に入り、24時間以上の間隔をあけた検査で2回連続して陰性になれば、隔離が解除される。その後は濃厚接触者と同じ扱いになり、1日2回の検査や個室での生活を条件に、練習や試合出場が可能だ。一方で選手以外の関係者は濃厚接触者でも7日間の隔離が義務づけられている。
<検査で陽性が報じられた主な選手と関係者>
◆銀メダリストも フィギュアスケート男子の18年平昌大会団体銀メダリストのミハイル・コリャダ(ROC)が入国前の検査で陽性となり、別の選手と入れ替わった。
◆ジャンプ金候補が欠場 女子で今季W杯6勝を挙げて個人総合首位に立っているマリタ・クラマー(オーストリア)が、入国前に2度の検査でも陽性となり、2月1日に欠場を発表。
◆日本選手は一転陰性 2日に日本オリンピック委員会(JOC)がスキー選手1人が入国後の検査で陽性だったと発表したが、その後の検査は陰性で翌日に選手村に戻った。
◆宇野のコーチも フィギュアスケート男子の宇野昌磨を指導するステファン・ランビエル氏(スイス)が3日、入国前の検査で陽性判定が出たとインスタグラムで公表した。
◆スピードスケート日本代表コーチも スピードスケート日本代表で高木美帆らを担当するヨハン・デビッド・コーチが3日、陽性となり隔離措置を受けているとツイッターで明かした。選手の濃厚接触者なし。
◆旗手交代 米国選手団の女子の旗手だったボブスレー2大会連続銀メダルのエラナ・マイヤーズテーラーが陽性となり、スピードスケート女子1000メートル世界記録保持者ブリタニー・ボウに交代した。
◆複合男子はメダル候補が次々 ノルディックスキー複合でW杯個人総合3連覇中のヤールマグヌス・リーベル(ノルウェー)が、開幕直前に陽性に。その後、14年ソチ、18年平昌大会の個人ノーマルヒルを連覇したエリク・フレンツェルや今季W杯初優勝のテレンツェ・ウェーバー(ともにドイツ)も北京空港到着時の検査で判明した。





