東京パラリンピックも1年程度延期されることになった。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で、2月末から国内外で予定された競技会は相次いで中止され、日本の競技団体、選手たちも活動を制限されている。重度の障がい者がプレーするボッチャは2月上旬から日本代表活動を休止し、選手は体調維持に細心の注意を払いながら個人調整中。ウイルスに感染すれば重症化の恐れもあるが、深刻な事態を前向きにとらえてメダル獲得へ準備を進めている。

■LINE通じミーティング

ボッチャ日本代表を率いる村上光輝監督(45)は落ち着いていた。「選手には焦らずに、今できる準備をしっかりしようと話している。私たちとも、選手同士でもLINEを通じてミーティングしているし、その都度リポートなども提出させています」。あらゆる事態を想定してきただけに動揺はない。

2月7日から3日間、大阪府で強化合宿を行って以来、代表活動は休止したままだ。選手は脳性まひや筋ジストロフィーなどで四肢や体幹に重度の障がいがある。他のパラアスリートに比べて呼吸機能が弱く、ウイルスに感染すれば重症化の可能性もある。それだけに日本協会としては早い段階からホテル宿泊、新幹線と航空機での移動禁止を通達。選手はそれぞれ自宅や各自の練習拠点で調整を続け、体調面では代表トレーナーの詳細なヒアリングも受けている。

LINEを通じてお互いに練習メニューを報告、確認し合い、村上監督には「応援される選手になるにはどんなプレーをしたらいいか」といったテーマでリポートを提出。東京パラリンピックへ向けた問題点や要望も伝えているという。さらにビデオ通話機能を利用してコミュニケーションを密にし、結束を固めている。

この1カ月で世界の強豪が出場予定だったジャパンパラ競技大会、健常者が日本代表に挑む東京カップが中止された。4月末に遠征予定だったカナダの国際大会もなくなった。今後の代表合宿もどうなるか分からない。昨年12月の日本選手権でBC1~4の4クラス優勝者がひと足先に東京大会代表に内定。残る6人の代表は世界ランキングなどを参考に4月末にも決定する予定だったが、それも不透明になった。

それでも村上監督は「延期になっていろいろとやれることが多くなるし、来年ならウイルスに関する体調面の不安もなくなりますから」と前向きだ。リオ大会のチームBC1・2銀メダルからステップアップし、全クラスでのメダル獲得へ。見えない敵が立ちはだかるが、ボッチャ日本代表はあくまでプラス思考で準備を進める。【小堀泰男】

◆ボッチャ 男女の区別はなく障がいの程度によってBC1、BC2(脳性まひ)、BC3(脳性まひ、運動機能障がい)、BC4(運動機能障がい)まで4つのクラスに分かれて個人、2対2のペア、3対3のチームで試合が行われる。東京パラリンピックでは4クラスの個人戦と団体戦としてBC1・2のチーム、BC3、BC4各ペアの合計7種目が行われる。個人戦は1種目24人(BC1は20人)、団体戦には1種目に10チームが出場。日本は団体戦2種目に開催国枠1を持ち、世界ランキング次第で個人戦にも1種目2人まで出場の可能性がある。代表は10人。