アーチェリー男子の武藤弘樹(22=トヨタ自動車)が、東京都内のナショナルトレーニングセンター(NTC)で練習を再開している。

延期となった東京五輪(オリンピック)・パラリンピックの日本代表入りを目指し、1日600本の撃ち込みをしている。

「久々に試合と同じ距離で撃ったら、的がとても遠く感じました」と驚きを交えて話した。NTCを拠点とするが「練習する他の選手との間隔が、これまで以上に広がりました」。練習後に立ち寄る施設内の食堂でもソーシャルディスタンスが守られており、新型コロナ対策の徹底ぶりを実感している。

外出自粛期間中は、愛知の実家で調整した。一室を改装して練習場にして、近距離の撃ち込みに励んだ。東京五輪延期が決まったことでさらに練習が積めるとプラスに捉え、「目標は変わらず、団体でも個人でも金メダルを取りたい」と意気込む。

愛知・東海中1年で競技を始め、わずか1年で全国大会に出場するレベルに成長した。東海高時代には国際大会にも出場し、シニア代表入り。順風満帆な競技人生だったが、16年リオデジャネイロ五輪の選考会では予選落ち。「五輪はずっと遠い舞台なのかと思いました」と振り返る。

慶大進学後に出場した18年アジア大会が、武藤の転機となった。代表の主力チームに選ばれ、五輪代表が手の届く所まで来ていると感じた。「(今は)選考会の先を見据えて戦えている」と話す。3月の2次選考会では、12年ロンドン大会男子個人銀メダルの古川高晴に次ぐ2位で勝ち抜いた。来年3月に開かれる最終選考会で、出場5人のうち成績上位3人に入れば代表内定となる。

2カ月間近くも実戦練習から遠ざかり、感覚とのズレが出ていたが不安はない。むしろ、70メートル先の的へ矢を放てる喜びをかみしめている。

「久々に自転車に乗っても無理なく乗れるのと同じで、本数を重ねれば射形が洗練されてくるはずです」

五輪初出場を目指し、徐々に実戦感覚を取り戻していくつもりだ。【平山連】

◆武藤弘樹(むとう・ひろき)1997年(平9)年6月26日生まれ、愛知県あま市出身。中学の部活動見学で一心不乱に矢を放つ先輩の姿に憧れ、アーチェリーを始めた。愛知・東海高時代に初代表入り。趣味は一人旅。175センチ、75キロ。