全日本柔道連盟(全柔連)は東京五輪の1年延期を受け、男女14階級のうち13階級で内定している五輪代表を再選考せずに、代表を維持する方向で最終調整していることが29日、分かった。5月15日にオンライン形式で実施する強化委員会と常務理事会で内定者の処遇や、五輪代表が唯一決まっていない男子66キロ級の複数の選考プランなどに関して審議し、その後の臨時理事会で決定する。

全柔連は20年東京五輪に向け、代表選手の準備期間確保を重視した「3段階」による早期内定制度を初導入した。2月末までに男女13階級の代表が決まった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、五輪が1年延期したことに伴い、強化スタッフらが内定者の維持か否かなどについて議論を重ねた。1番手と2番手の実力が僅差の階級もあり、関係者によると「五輪まで1年以上あれば力関係が変わる」として再選考の声も上がったが、大半は代表維持の意見だったという。

代表選考においては、世界選手権やグランドスラム大会など主要国際大会での対海外勢の実績を重視する。6月末まで中断が決まっている国際大会は、感染状況次第で中断延長の可能性もある。現状今後の大会日程は白紙で、公平に選考する国際舞台がない。内定者の精神面の不安も懸念され、再選考によって“幻の代表”が訴訟を起こす事態も想定される。代表活動は休止中で、強化計画の変更も余儀なくされ、選考問題の他にも課題は山積だ。

全柔連の役職員19人が新型コロナウイルスに集団感染し、今月予定していた常務理事会なども1カ月延期となった。一部の内定選手から「早く決めてくれ」などの声も漏れていた。関係者は「コロナの収束が長引くほど混乱が生じる。国際大会の再開が不透明な中、公平な代表選考は難しく、決まった選手を強化した方が良い」と話した。

◆柔道の20年東京五輪代表選考 男女各7階級1人で、選手の準備期間確保を重視した「3段階」による選考で決める。(1)19年世界選手権覇者が同11月のGS大阪大会を制し、強化委員会で出席者の3分の2以上の賛成で代表入りが決定。女子78キロ超級素根輝のみが内定(2)同12月のマスターズ大会(中国)、2月のGSパリ大会、GSデュッセルドルフ大会終了時点で、強化委の3分の2以上が1、2番手の差が歴然としていると判断すれば代表選出。男子73キロ級大野将平、女子52キロ級阿部詩ら12人が内定(3)最終選考は4月の全日本選抜体重別選手権(福岡)で強化委の過半数の賛成で代表決定。男子66キロ級のみ決まっていなかったが、新型コロナウイルスの影響で大会が延期された。