【樋口新葉〈下〉】全困難を踏破した北京までの4年間 休養中の今、「その時」を待つ

日刊スポーツ・プレミアムでは、毎週月曜日にフィギュアスケーターのルーツや支える人の思いに迫る「氷現者」をお届けしています。

シリーズ第6弾、樋口新葉(ノエビア/明大)の全3回の最終回「下編」です。今季の休養を決めた理由、残りわずかとなった学生生活、そして憧れのスケーターからの激励-。北京オリンピックまでの日々も振り返りながら、スケートとどう向き合うかを思案するいまを教えてくれました。(敬称略)

フィギュア

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15年の全日本選手権、2位となり憧れの浅田真央(右)と表彰台に。中央は優勝した宮原知子

15年の全日本選手権、2位となり憧れの浅田真央(右)と表彰台に。中央は優勝した宮原知子

浅田真央のサプライズ「真央からのファイトっていう応援だからね」

その扇子の指し示す先は、明らかに自分だった。

2022年11月26日、東京・江戸川区スポーツランド。

樋口は興奮に足をバタバタとさせながら、スポットライトに照らされたそのスケーターからのメッセージを感じ取っていた。

送り主は「カプリース」を舞う、浅田真央だった。

座長を務めていたアイスショー「BEYOND」の最前列で、思いも寄らなかった心遣いが待っていた。

「びっくりしました! ショーの後に『あれ、指したのは、もう本当に真央からのファイトっていう応援だからね』と言ってもらって。すごくうれしかったです」

樋口の来場をツアーメンバーが知り、休養中のいまだからこそ、何かを届けたいと腐心してくれていた。迷える心に、1つのきっかけを与えてくれたのは、やはりスケートだった。

近況や今後について語る樋口

近況や今後について語る樋口

「次の4年間頑張ります、とは言えなかった」

9月のロンバルディア杯まで滑ってみて、考える。それが今季の始まりだった。

その先が見えなかった。

大学4年生。同じゼミの仲間は次々に卒業後を決めていた。

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スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。