【イチロー大相撲〈40〉】「#木戸で元とれた」 親方衆との”もぎり雑談”
大相撲の好きなところはいくつもあるけど、「木戸っていいなあ」と時々思う。
両国国技館の入り口にあたる木戸で、親方衆が来場者からチケットを受け取り、半券をもぎる。
会場に入る瞬間から始まるファンサービスだ。混んでいなければ、写真撮影やサインにも応じてくれる。
酷暑の中、屋外で「もぎり」を担当している親方4人に話を聞いた。話が脱線していく様子も、そのまま書きます。
大相撲
■今回の話題
〈1〉「玉鷲頑張ってますね」と言われる片男波親方。玉正鳳は?
〈2〉玉ノ井親方が明かす今後への危機感
〈3〉峰崎親方は4時間かけて満津田食堂へ
〈4〉境川親方のコメントに影響された二十山親方
「#木戸で元とれた」
X(旧ツイッター)には、こんなハッシュタグがある。
観戦に訪れた相撲ファンによる投稿で、「木戸を通ったたけでチケット代の元が取れた」という意味だ。
チケットを入り口でわたし、半券を切ってもらう。これを親方がやってくれる。写真も撮れる。話もできる。いきなりお得な体験になる。
元関脇寺尾の先代錣山親方がもぎりを務めていたころ、「寺尾行列」ができた。
この親方がもぎるところだけ、行列になるのだ。
人気の親方が笑顔で対応し、「楽しんでいってくださいね」と声をかけてくれる。写真もOK。これもまた、風物詩だった。
会場入り口でチケットの半券をもぎる係は、文字通り「もぎり」が正式名称。
9月の秋場所は、16人が「もぎり」を担当した。2人ずつ8班に分かれ、午前中から夕方までローテーションでまかなう。
2024年秋場所の「もぎり」
| 追手風 | 元幕内大翔山 |
|---|---|
| 玉ノ井 | 元大関栃東 |
| 入間川 | 元関脇栃司 |
| 湊 | 元幕内湊富士 |
| 立浪 | 元小結旭豊 |
| 木瀬 | 元幕内肥後ノ海 |
| 常盤山 | 元小結隆三杉 |
| 中川 | 元幕内旭里 |
| 片男波 | 元関脇玉春日 |
| 富士ケ根 | 元小結大善 |
| 陣幕 | 元幕内富士乃真 |
| 二十山 | 元小結栃乃花 |
| 高島 | 元関脇高望山 |
| 立田山 | 元幕内薩洲洋 |
| 峰崎 | 元幕内三杉磯 |
| 尾上 | 元小結濱ノ嶋 |
初日から12日目は午前8時半から午後5時半まで、90分ごとに班が入れ替わる。来場者が多い午後1時から午後2時半、午後2時半から4時までの時間帯は、2班ずつが割り当てられている。
まずは、今場所の序盤の話題を独占した玉鷲の師匠、片男波親方(元関脇玉春日)に聞いた。
―酷暑の中での業務ですが、暑さ対策はされていますか
片男波親方「アイスノンを持ってきて、首に当てて冷やしてます。9月なのに異常ですよね。(7月の)名古屋より暑い」
―親方がもぎりをするのは、大相撲らしいファンサービスです。ほかのスポーツイベントではなかなか見られない光景ですが、どう思われていますか
片男波親方「楽しいですよ。お客さんと話せるからですね。審判部の時とは違う。そういう意味では、仕事のやりがいを感じます」
―お客さんとはどういう話をされますか
片男波親方「『玉鷲、頑張ってますね』とよく言われますね。(片男波親方の出身の)愛媛県から来ましたという方もいらっしゃいます」
―玉鷲関は歴代1位となる初土俵からの連続出場記録を更新中です。今場所は話題にされることが特に多いですか
片男波親方「多いですね。でも、もぎりをやり始めたころから、『玉鷲、頑張ってますね』とはよく言われました」
―玉正鳳関は
片男波親方「ないです(笑い)。いや、10回に1回あるかな。だから本人にも言うんです。活躍が足りないから、ファンが少ないよって」
―もぎりの時、写真撮影やサインはOKですか
片男波親方「どちらもOKですよ。せっかくこういうお客さんの前に出られるわけですから。お客さんには、何でも楽しんでもらいたいですね」
誠実な師匠だからこそ、玉鷲のような関取が育つのだろうとしみじみ思う。
実は今場所から、QRチケットによる入場口ができた。
これはこれで、観客側にも協会側にもメリットがある。データが取りやすく、間違いが起きにくい。
アナログのもぎりは、味わい深い反面、間違いも起きる。本人認証や不正な転売への対策はどうしても後手に回ってしまう。
違う日のチケットを持ってくる人や、プロ野球や歌舞伎などまったく違うイベントのチケットを差し出してくる人もいるという。例えばセブンイレブンで発券されたチケットの場合、緑の縁取りのデザインになっているため、もぎりの際に気をつけないと間違えてしまうという。
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1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。
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