W杯の初戦はどちらも負けたくないという戦いになる。そして力のある方とない方を比べると、ない方がどうしても守備的にブロックをつくって相手の攻撃を難しくしようとするんだ。

ブラジル-セルビア戦もそうだが、それがよく表れていたのがサウジアラビアや日本が金星を挙げた試合。ベルギーもそれでカナダに脅かされた。だがそのブロックをこじ開ける力があるのがブラジルだね。

今日は多少苦戦した。シュート数も多いし、ボール保持率も高いけど、後半にならないと点が取れなかった。ただ点が取れなくても守る方は消耗していく。そこで決められる力があるブラジルの試合では、日本やサウジアラビアが起こしたようなハプニングは起きなかったよ。

ブラジルはいつだって優勝候補筆頭だ。そもそも、これまでW杯で優勝している国はそれほど多くない。ブラジル、アルゼンチン、ヨーロッパではドイツとか。最近イタリアは出てないけど、そういうところが何回も優勝している。クラブW杯も結局は南米対ヨーロッパの決勝になる。この差はなかなか縮まらないよ。文化が違うからね。

ビニシウスやラフィーニャみたいな攻撃的な選手、ドリブラーがブラジルに戻ってきた。14年のW杯ブラジル大会の時にはネイマールくらいしかいなかった。今、そういう若い世代が普通にみんなビッグクラブで中心選手としてプレーしている。初W杯という若い選手がいっぱい出てきて、ブラジル代表の新しい強い時代がまた来るんじゃないかな。

アイドルであった選手のマネをするから、後継者がでてくる。それがブラジルの文化。サポーターは勝つだけじゃなく、個人のスキルをすごく好む国。すごい技を決めると1点取ったような騒ぎになるから。子供のころからそういうのをやりたくなる土壌がある。それもブラジルの文化だね。

ネイマールのけがが少し心配だが、ターゲットにされる選手だからね。でも彼はリズムをつくってくれる。みんな破壊力のあるネイマールを期待しているかもしれないけど、今は少しプレースタイルが変化した。1点目も、あそこを崩してシュートを打とうとしたら、ビニシウスが打って。そのはね返りをリシャルリソンがシュート。2点目もネイマールがビニシウスにパスをして、ビニシウスがリシャルリソンにパスをして、オーバーヘッドキック。ネイマールはパスで絡んでるよね。

前はネイマール1人に負担がかかりすぎたけど、今は分散している。自分から全部いくんじゃなくて、パスしたり、接触プレーを減らしたり。いつもどこかケガしている感じがするけど、考えてプレーしているし、それほど大きなけがじゃないと思う。(日刊スポーツ評論家)