日本の真面目さが裏目に出た。立ち上がり、相手の出方を見て突破口を見いだそうとした。守備から入って前半はゼロで抑え、後半勝負を狙ったのだろう。しかし前半に失点してしまった。それでも前半のうちに取り返そうとはしなかった。先制失点も想定内だったのだろう。

試合前に想定した、作戦通りにやり過ぎた。丁寧に足元のパスで相手を崩そうとしたが、相手は日本を十分すぎるほど研究してきた。ボールの出どころを2人で囲んだため、日本は前線へいいボールが出せなかった。いいボールが出ないから、MF宮沢もいつもの飛び出しができなかった。中盤より前は、相手ゴールに背中を向けるプレーが多かったね。

野球で言うと、捨て球や遊び球を織り交ぜることができなかった。1球1球を丁寧にコーナーへ投げようとしたから、肝心な勝負球が決まらない。守備でも中盤で相手を囲むことができず、自分の守備範囲をしっかり守りすぎて、リスクを冒して相手を取り囲むことができなかった。

CK時もショートコーナーばかりだったが結局、チャンスになったのは終了時間が迫って苦し紛れに中へ放り込んだ時だった。流れの中でもチャンスが作れたのは、0-2になってからロングボールを蹴り込んだ時だった。攻撃機会を捨てるつもりで、無謀な攻撃を仕掛けることで、短いパスがいきるのに、丁寧すぎたね。

これでなでしこのW杯が終わった。「足跡を残したか」と問われると「ハイ」とは答えられないね。来年のパリ五輪、4年後のW杯に向けて可能性は見せた。女子サッカーへの無関心がしばらく続くかもしれないけれど、今までのように耐えて耐えてまた、チャンスをつかむしかないね。

(日刊スポーツ評論家)