FC東京U-23(23歳以下)に所属するFW久保建英(16=東京ユース)が、2017年の上半期を振り返った。7月1日のJ3ブラウブリッツ秋田戦にフル出場した後、取材に対応。メディアから注目され続けた中、15歳から16歳に、中学生から高校生になった6カ月間を「本当にいろいろありました」と回想した。


 言葉通り、目まぐるしくプレー環境が変わった半年間だった。


 【1月】中学校の冬休みを利用してスペインへ。約1週間の滞在中、かつて所属したバルセロナの下部組織カデーテA(15~16歳)の練習に参加した。元チームメートと練習場ラ・マシアで再会、スペイン語で談笑する姿がSNSなどで伝えられた。体力測定の数値はトップクラスだったといい、バルセロナ関係者を喜ばせた。


 【2月】日本サッカー協会の技術委員会で、久保のコンディション管理について話し合われた。日本のA代表の監督選定や強化について議論する委員会で、1人の選手、しかも当時15歳の処遇がテーマとなるのは異例。西野朗委員長が「日本の宝。オーバーワークにならないようにしながら(5月の)U-20W杯を経験させて、その後の(10月の)U-17W杯で世界にアピールできれば」と説明。過密日程でパンクしないための対策が練られた。


 【3月】上旬。U-20代表候補合宿に呼ばれ、J1東京と行った練習試合でU-20代表“初ゴール”を決めた。中旬には、J3開幕戦(対富山)でJリーグ初先発。下旬は、U-20代表のドイツ遠征に参加した。4試合で2得点2アシストと結果を残し、5月の本大会メンバー入りを決定的にした。


 【4月】高校入学。本来の年代である高円宮杯U-18プレミアリーグ東地区の開幕戦に出場し、いきなりゴール。15日には、J3のC大阪U-23戦でJリーグ最年少ゴール記録を更新した。3人抜きからの豪快な左足弾を、FW森本貴幸(東京ヴェルディ)を上回る「15歳10カ月11日」で決めた。これは97年天皇杯で愛媛ユースの石川大が打ち立てた「15歳10カ月24日」も更新。日本のすべての1種公式戦(年齢制限なし)で最も若い得点者になった。


 【5月】3日のルヴァン杯コンサドーレ札幌戦でJ1公式戦デビュー。得点は奪えずも、直接FKのキッカーを任されるなど存在感を示した。続いて、U-20W杯韓国大会。日本史上初となる「飛び飛び級」で出場した。結果、チームは1次リーグ3位突破もベスト16で敗退。久保は4試合中3試合に途中出場し、無得点だった。「(期待は)気にしないようにやっていたけど、期待には応えられなかったのかなと思います。悔しい思いは、この大会で本当に最後にしたい」。


 【6月】平日はユースで練習し、週末はJ3リーグ出場を重ねた。1日の首位ブラウブリッツ秋田戦には先発平均年齢18・09歳の若さで挑み、開幕13戦無敗の強敵と引き分け。結果こそ出場6戦連続の不発に終わったが、久保は両軍最多のシュート4本を放った。「サッカーは年齢じゃないと言われますけど、正直、年齢に左右されるところはある。でも、今日は年齢のストロングな部分(若さ)を出せたんじゃないかなと思います」と、その中心になった。


 この後、久保はJ3の福島ユナイテッドFC戦とガイナーレ鳥取戦に先発。7月17日現在、J3の出場記録は12試合1得点だ。ここからは本人の上半期評-。


 「この半年間、いろんなカテゴリーの試合に出させてもらった。U-20代表、J3、プレミア。それぞれ違ったサッカーを経験できていることが、自分の成長につながっている」


 「J3は(トップチームとユースの混成軍のため)平日に練習できない中、思った以上にやれている思いがある。正直に言っちゃうと、秋田戦は特に。だからこそ、いつもより悔しい。やれると、もっと求めちゃう自分がいる」


 「最近、シュートの時に落ち着きが足りないなあと思います。『たられば』になっちゃうし、簡単じゃないですけど、ちょっと余裕があると、考えてしまうんです。逆に余裕がなくて、ここしかないって時の方が入る気がする。余裕があっても、止まらず、その都度どんどん判断を変えていかなければ」


 「とにかく、いいシュートを打って入らない時がガッカリします。1試合1試合、いつもゴール決めたいと思ってますし、どこが相手でも自分が決めていかないといけない。(ゴールが)遠ざかっちゃってるところは、良くない。でも、決してやれてないわけじゃないと思っています」


 受け答えは極めて丁寧。しっかり、記者の目を見て即答してくる姿は取材していて気持ちいい。最後に、下半期の目標を聞くと「J3で勝ち点3を積み重ねていけば、道は開けてくる」と言った。


 10月にU-17W杯インド大会があるが、まず道を開きたいのは「J1リーグ」だろう。カップ戦(5月のルヴァン杯)でJ1公式戦デビューは果たしたが、あくまで日本の最高レベルはリーグ戦。クラブは、夏休み中に久保をデビューさせるべく、7月12日の練習からトップチームの練習に、徐々に参加させている。


 もちろん、試合出場は“大人”との競争に勝った上で。7月下旬から練習参加を本格化させ、最初に目指すのは30日のホーム新潟戦だ。久保が「成長」を実感して迎える下半期。追っかけ回すたびに「注目しすぎるな」と怒られるが、そうはいかない…。17年の後半戦も久保建英をフルマークしていきたい。【木下淳】


 ◆木下淳(きのした・じゅん)1980年(昭55)9月7日、長野県飯田市生まれ。早大4年時にアメフットの甲子園ボウル出場。04年入社。文化社会部、東北総局、整理部を経て13年11月からスポーツ部(現在は東京五輪パラリンピック・スポーツ部)。昨年はリオデジャネイロ五輪など取材。FC東京担当1年目。