複雑な心境だ。2つの思いが交差する。

 日本は10日、ブラジル相手に1-3で負けた。このスコアと試合展開には、それぞれ意見があるだろう。「前半で終わった試合」「王国相手に1-3は立派」などなど。

 試合直後、私は前者の意見が強かった。相手は3点を入れてから明らかに手を抜いていた。後半は6人を交代し、流し気味で終了のホイッスルを迎えた。当然、勝利の喜びを表現する選手はいない。

 少しだけ、過去の話をしよう。日本代表は海外遠征時、選手の部屋の冷蔵庫に入っているアルコール類を事前に抜いている。それを知った当時日本代表のジーコ監督は、スタッフを呼んだ。「何で冷蔵庫にビールが入ってないんだ?」「合宿中は禁酒だからです」。温厚なジーコ監督が怒った。「選手を信用しないのか? お前らはセレソン(代表選手)をなんだと思っているんだ。国を代表する選手が、大事な試合を前にして酒を飲むわけないだろう。セレソンは別格なんだよ」。

 ブラジルが後半、交代で投入した6人もセレソンだし、その6人も世界トッププレーヤーだ。当然、所属クラブでは揺るぎないレギュラーで、代表でレギュラーの座をつかむため、必死にプレーしたはず。セレソンとしての誇りもある。ネイマールら、何人かは時間帯によって、手を抜いたようなプレーをするが、それは「強弱を付けている」とも取れる。弱のリズムがあるから、強に切り替わった時に威力を発揮する。そう考えると、1-3は納得だ。

 しかし、試合後にハリルホジッチ監督が発した記者会見のコメントには耳を疑った。「後半だけなら我々が勝っていた」。そうだ、日本の1-0の勝利…とはならない。3-1を冷静に受け止めようとする気持ちが、そのひと言で、一気に吹っ飛んだ。本当に、日本のW杯をこの人に託していいものか。

 くれぐれも、W杯本大会では、同じコメントを言わないでね。頼むぞ、ハリルホジッチさん。

 ◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、韓国・ソウル生まれ。96年入社し、20年間、サッカー担当。浦和レッズ担当だった20年前、ジョホールバルで岡野雅行が決勝点を入れて、忙しい日々を送ったことを思い出す今日この頃。2児のパパ。