3月26日、欧州遠征中だった日本代表の取材エリアですてきな発表があった。「この代表期間中に(第2子が)生まれるかもしれない」と話していたFW宇佐美貴史(25)に「そういえば、お子さんは生まれた?」と聞くと、数秒考えてから「今日、生まれました」と明かした。長女菫(すみれ)ちゃんに続いて女の子。この日の取材では名前を明かすことがなかったが、後日、妻蘭さんのインスタグラムで「桜」ちゃんに決まったと発表された。

 ここでふと疑問に思った人もいるのではないだろうか。宇佐美と言えば、G大阪の下部組織で育ち「至宝」と呼ばれてきた。両親も大のG大阪サポーターで、16年夏にドイツへ移籍する際はセレモニーで「またいつか、このクラブでやれることを夢見ています」と話すほどガンバ愛にあふれている選手だ。そしてG大阪の宿敵と言えば、C大阪。そのC大阪のシンボルは、スペイン語で「セレッソ」と言う「桜」だ。先日、宇佐美に命名に至った経緯を聞いてみた。

 「最初はね、反対したんですよ」と宇佐美。「僕が『桜』って付けたら『何だかなあ』って思うガンバサポーターの方もいるんじゃないかと思って」。それでも、桜ちゃんに決めたのは理由があった。

 「奥さんが、出産前になって少しナーバスになっていた時期があったんです。その時、散歩に出掛けたら桜がすごくキレイで『気持ちが落ち着いて癒やされた』と言っていた。『こんなにすてきな花が咲く時期に生まれる子。やっぱりこの名前にしたい』と言われて『そうしよう』ってなったんです」

 経緯を聞いて、納得した。同時に宇佐美が遠く離れたドイツでもサポーターを大事に思う気持ちも伝わってきた。今はもう2児の父。実は現在、不安なことがあるという。

 「まさか自分が女の子2人のパパになるとは全く思っていなかった。女性ばかりで家に僕の味方いないじゃないですか?だからオスのドーベルマンでも飼おうと思っている。娘もママの味方するやろうし、僕が責められた時にキッってにらんでくれる犬(笑い)」

 そう話す宇佐美はとても幸せそうだった。蘭、菫、桜。美しい花に囲まれて過ごす宇佐美、そして宇佐美家の生活がもっと彩られるよう、願っている。【小杉舞】


 ◆小杉舞(こすぎ・まい)1990年(平2)6月21日、奈良市生まれ。大阪教育大を卒業し、14年に大阪本社に入社。1年目の同11月から西日本サッカー担当。担当はG大阪や神戸、広島、名古屋、J2京都など。