新元号「令和」時代に突入した。女子サッカー界は、そんな節目の年に勝負どころを迎えている。

日本サッカー協会の田嶋幸三会長は今年4月、国内女子リーグ最高峰の「プレナスなでしこリーグ」を21、22年をめどにプロ化する構想を明言した。同リーグは1部、2部それぞれ10チームずつに分かれて戦っており、日本女子代表の11年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会優勝時には“なでしこフィーバー”で1部の1試合平均入場者数は前年度の3倍以上となる2796人を記録。しかし、同年以降は減少傾向で昨季は1414人まで落ち込んでしまった。10年の912人に比べると、まだ踏みとどまっていると言えるが、男子では3部にあたるJ3でも昨季は1試合平均約2500人を集めている。プロ化へ向けて集客面での改善は必須だ。

そういった意味で、6月にW杯フランス大会を控えている今年はチャンスだ。女子はW杯の翌年にオリンピック(五輪)を迎えることもあり、W杯で生んだ勢いを五輪にも反映させやすい。事実として銀メダルを獲得したロンドン五輪が行われた12年も、なでしこリーグ1部の1試合平均入場者数は2572人と大台の2000人を越えた。準優勝したW杯カナダ大会があった15年は、11年以降の入場者数減少に歯止めをかけて前年比約250人増の1723人だったことを考えると、やはり国際大会での結果は重要だと言える。16年はリオ五輪アジア最終予選でまさかの敗退を喫し、なでしこ復権の機会を自ら逃してしまった。20年は地元東京での五輪。サッカーで言うところの“最大の決定機”をしっかりとものにしたいところだ。

近年は欧米各国も女子サッカーに力を入れ始めており、フィジカルやパワーだけに頼らない、より戦術的な戦い方をするチームも増えた。日本も14年U-17W杯コスタリカ大会や、18年U-20W杯フランス大会を制した若手が台頭し始め、全体的なレベルは上がってきていると感じる。なでしこリーグのプロ化も見据え、もう1度ここで脚光を浴びることができれば、一気に女子サッカー人気上昇の流れをつくることも可能なのではないだろうか。

実は、なでしこリーグは93年開始のJリーグよりも歴史は古く、平成元年の89年にスタートした。男子同様、まさに平成とともに発展した日本女子サッカー界。そんな中で、令和1発目の国際舞台としてW杯フランス大会を迎える。新時代に踏み出す新たな第1歩を日本全体で応援していきたい。【松尾幸之介】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆松尾幸之介(まつお・こうのすけ) 1992年(平4)5月14日、大分市生まれ。中学、高校はサッカー部。中学時は陸上部の活動も行い、中学3年時に全国都道府県対抗男子駅伝競走大会やジュニアオリンピック男子800メートルなどに出場。趣味は温泉めぐり。