今季ここまで17試合に出場しているJ2アルビレックス新潟のユーティリティープレーヤー、DF早川史哉(27)の存在感が、ここに来てグッと高まってきた。4日ギラヴァンツ北九州戦と11日モンテディオ山形戦はセンターバック、19日東京ヴェルディ戦では右サイドバックと、3試合連続でフル出場を続け、安定した守備と正確なフィードで攻守を支えている。そんな早川の好調をサポートしている「足元の相棒」へのこだわりと秘密を探ってみた。

足元の相棒選びには、うまさと賢さ、状況判断の良さを武器とする早川らしい、繊細なこだわりが詰まっていた。スパイクはアシックスを使用しているが、最も注目すべき点は「靴紐」にある。着用時のホールド感を重要視する早川は、各メーカーの既製品に多いポリエステル性のものではなく、「綿100%」の靴紐にカスタマイズしている。強度があり、乾きが早く、耐熱性もある化学繊維のポリエステルの素材に比べ、なぜ伸びやすい素材である綿100%の靴紐を選ぶのか。主な理由は2点あると言う。

1つ目はケガ予防。デビューした16年に患った急性白血病から18年に復帰を果たした早川だが、長い闘病生活で足先まで筋力は落ち込み、練習では捻挫を繰り返していた。悩んでいた時期、知人に綿100%の靴紐を薦められた。「スパイクの中でズレがどうしても生まれていたけど(綿100%は)簡単にほどけず、カチッとはまりケガが減った」。大病を克服し、プロとして初めて1シーズンを過ごした昨年。この相棒は確実に早川の足元を支え、厚い信頼関係で結ばれた。このお気に入りのアイテムは今も手放さず、月に1度は交換している。

2つ目はプレースタイル。「自分主導」で動きだすアタッカーとは違い、相手の動きやドリブルに対応しなければならない守備を専門とするだけに足元のぐらつきは即ピンチを招き、失点につながってしまう。さらにチームは攻撃的な戦術を採用するだけに最終ラインからのパス力も求められる。「(綿100%の靴紐は)ホールド感があるので守備の面で無理が利くし、キック時に軸足がずれない。安心感はすごい」と説明する。

プロはパスやシュート、攻守での立ち位置など数センチ、数ミリ単位のズレで勝負が決まってしまう厳しい世界。戦術理解以上に多くの選手たちが足とピッチをつなぐスパイクに細かなこだわりを持ち、プレー技術を向上させている。

今季リーグ戦も終盤戦に突入した。30節を終え、3位新潟とJ1昇格圏内の2位ジュビロ磐田の勝ち点差は9。逆転昇格に向けて、早川が自分好みにカスタムした「相棒」とともに、どんな活躍を見せてくれるか注目したい。【小林忠】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆小林忠(こばやし・ただし) 1985年(昭60)6月26日、新潟県阿賀野市(水原町)生まれ。水原サッカー少年団で競技を始め、北越高2年時に全国高校選手権出場。保育教諭として地元のこども園に12年半勤務した後、19年途中に入社。20年からJ2新潟担当。

スパイクを見つめる早川(9月21日撮影)
スパイクを見つめる早川(9月21日撮影)