【ジャカルタ23日=岡崎悠利】アジア大会に参加しているU-21日本代表は今日24日、決勝トーナメント1回戦でU-23マレーシア代表と対戦する。

1次リーグ最終戦でベトナムに0-1で敗れ、奮起が期待される攻撃陣の1トップにはFW前田大然(だいぜん、20=松本山雅FC)の先発が濃厚。山梨学院大付高時代は部活動を“出入り禁止”になる苦い経験も味わいながら成長した快足FWが、若き森保ジャパンの突破口となる。この日はジャカルタで最終調整した。

小学生時代からほぼ変えたことのない丸刈りの頭が目立つ前田は、手動計測ながら50メートル走で5秒7を記録したこともある快速が武器だ。地元大阪の運動会での徒競走では「1番しかなったことがない」と、冗談っぽく笑う。スピードに体幹の強さも兼ね備え、優勝候補のベトナム戦ではチームが押される中で競り合いにことごとく勝って存在感を見せた。現時点で文句なしの1トップの1番手だ。

雄大な自然のようにおおらかに育ってほしいと、大然と名付けられた。5人きょうだいの長男。名の通り、幼少期は子どもたちだけでたき火をしたり、木の枝や葉を集めて秘密基地を作ったり。ゲーム機をほしがることもしなかった。小2から2年間は体操も経験したことで、強い足腰にしなやかさが加わった。中学で、その身体能力は山梨学院大付属高の吉永監督に見初められた。

高校時代は「悪さもしてました」と前田。チームの約束事を違反するなど規律を乱し、2年時には吉永監督から部活参加を禁止されたこともあった。初めて経験した挫折。それでも朝早く登校し、ランニングや校舎の掃除を続けた。「今思えば、あの期間で人を思いやる心が身についたと思う。人が見ていないところで率先して動く大切さを知った」。試合中は常にプレスに走り、おとりになる“無駄走り”をいとわない。反省は今、献身的なプレーとなってピッチに表れている。吉永監督は「(規律違反が)美談にはならないが、あの時間があったから日の丸を背負えるまでの選手になったとも思う」と、今後の飛躍に期待を寄せた。

高校選手権のような全国大会の出場経験はなく、2度の練習参加で松本入りを勝ち取った。全国的にはまだ無名だが、まずはアジア大会を勝ち抜くゴールを奪い、インドネシアで名をあげる。

◆前田大然(まえだ・だいぜん)1997年(平9)10月20日生まれ、大阪府出身。松本所属。ポジションはFW。川上FCから山梨学院大付高に入学し、3年時の高円宮杯U-18プリンスリーグ関東では12ゴールで得点王。5人きょうだいで姉1人、弟1人、妹2人。上から千咲(ちさき)、大然、野乃花(ののか)、草原(そうげん)、野原(のはら)の自然派の名前が並ぶ。173センチ、73キロ。