サッカー男子決勝で20年東京オリンピック(五輪)世代のU-21(21歳以下)日本代表はU-23韓国代表に延長の末に1-2で敗れ、2大会ぶり2度目の優勝を逃した。A代表の主力をオーバーエージ(OA)に起用する相手に前半は押し込まれたものの、後半は盛り返して一進一退の攻防を見せ、強敵と堂々と渡り合った。森保一監督(50)は、日本人初の兼任監督として初めての国際大会で結果を残した。

120分の熱戦を終えた日本の選手たちは次々とピッチに倒れ込み、天を仰いだ。立ちはだかったのはトットナムのエースFW孫興民。延長開始早々にあわや失点のシュートを浴びると、直後の3分に失点。FW李承佑のシュートをお膳立てしたのも孫興民だった。延長前半11分にもFKからFW黄喜燦に頭で合わせられ、立て続けに失点。DF原は「延長に入るときに相手の方が焦っていたし、勢いが増すことは予想できた。そこを全員で共有できていなかったことがまずかった」と悔やんだ。90分間抑え続けたが、最後は耐えきれなかった。

意地は見せた。同後半10分にDF初瀬の右CKをFW上田がニアで合わせ、残り5分で1点差に迫った。すぐにボールをセンターサークルに持ち帰って攻め続け、韓国を追い詰めた。森保監督は「2点とられて難しくなったが、1点を返して最後まで諦めない姿勢を見せてくれた」と選手をたたえた。

現時点で孫興民らとの差は承知の上。それでも物おじしなかった姿勢こそ指揮官が求めたものだった。チームが集合した日、指揮官は6月のワールドカップ・ロシア大会で見たことを語った。脳裏にあったのは、世界のビッグネームにも気後れしないDF長友らの姿だった。「相手に関係なく、100%の力を発揮すること」。試合前に必ず口にするこの言葉の大切さをロシアで再確認し、最初に伝えていた。

選手はこの言葉を信じ、A代表クラスの相手に真っ向から体をぶつけ合った。MF三好主将は「年齢は関係ない。埋めないといけない力の差」と言い切った。兼任監督のもとで、五輪の先にあるA代表を目指す意識がはっきり芽生えた。「タフに粘り強くやってくれた」と指揮官。思いは伝わった。

ブレーキを踏むたび座席シートが前方へ抜けるように傾くバスに揺られながら、練習場に向かう道は渋滞が日常茶飯事。選手が「芝の状態が一番いい」と話した練習場のトイレには紙もなかった。体調を崩す選手も出た約3週間を戦い抜き、結果と確実な収穫を手にしてアジア大会を終えた。【岡崎悠利】