2大会ぶり5度目の優勝を狙うF組の日本(FIFAランキング50位)が、1次リーグ第2戦でオマーン(同82位)に1-0で勝った。前半28分、MF原口元気(27=ハノーバー)が自ら得たPKを右足で決めて先制。W杯ロシア大会ベルギー戦で得点しながら、森保ジャパンでは当初2番手になっていた男が本職の左サイドで存在感を示した。辛勝も2位以上での決勝トーナメント進出が確定。17日の第3戦はウズベキスタン(同95位)と対戦する。

 

MF原口がペナルティースポットにボールを置き、一息ついた。0-0の前半28分、自らつかんだPK。ゆったりした助走から右足を振り、ゴールネット左に突き刺した。オマーンのGKにコースは読まれたが、指先にかすりもさせない高速キック。「GKが当たっていて嫌な感じがあったので、読まれてもいいように強く、コースだけを意識して蹴った」。新リーダーの自覚でスコアを動かした。

2戦で3得点に絡んで2連勝に導いた。「正直、あんなに苦しむとは思わなかった」という初戦トルクメニスタン戦(3-2)。自身の左サイドを起点に変えた後半から、2点を生み出した。気温30度超のピッチ。実は足がつっていた。それでも交代を求めることなく走り抜き、翌日は宿舎プールなどで回復に専念。「午前も午後も。時間が足りないよ」と言うほど体をケアし、備えていた。

その成果が前半26分に表れた。MF南野のシュートのこぼれ球に向かい、まっしぐら。左でパスを出した後、すぐ中央へ。クリアボールに伸ばした右足がファウルを誘い、PKを獲得した。3日前は「勝ててホッとした、というよりイライラした」。ため込んでいたエネルギーを爆発させた。

W杯ロシア大会では右MFの1番手として3試合に先発し、あのベルギー戦で先制点を決めた。日本の決勝トーナメント初ゴール。逆転負けで快挙は吹き飛ばされたが、4年後に向けた覚悟を取材エリアで口にしていた。「右でも力を出し切れたけど、正直、左で。思いっきり自分の好きなところで勝負したい」。半年後-。幼少時から主戦場にしてきた左サイドに戻って大会2勝目をもたらした。

ただし、満足はない。W杯後に発足した森保ジャパンでは、左MFの定位置をMF中島が確保。今大会は負傷離脱したものの、一時は追う立場になっていた。「想定外。心の中には、W杯でやった自信があった」と本音を隠せない時期もあったが「(若手との競争を)完全に楽しめている」と歓迎。追加招集のMF乾もロシアではチーム最多の2得点を挙げただけに、まだ競争は始まったばかりだ。

8大会連続の決勝トーナメント進出も、PKの1点止まり。試合終了の笛が鳴ると、納得いかない表情で首を左右に振った。「勝ったし、突破はしたけど、内容は良くなかった。このままじゃ決勝トーナメントで勝てない。もう1度、チームとしても個人としても精度を上げていかないと」。そう話す27歳の原口にとっては、新リーダーになれるか試される大会でもある。アジア杯を制するまで、満足はできない。【木下淳】