東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)が女性蔑視発言で、辞任する意向を固め、後任として日本サッカー協会相談役の川淵三郎氏(84)の就任の方向で11日の時点では、調整されていた。

川淵氏はサッカー界の重鎮で、Jリーグ創設の立役者。日本協会会長も務めた。

ストレートな物言いで、数々の改革を成し遂げてきた剛腕だが、サッカー界で川淵氏といえば、あの“オシム発言”が有名。次期日本代表監督を、日本代表が惨敗したW杯ドイツ大会の総括会見で、ポロリした日本サッカー界のある意味、歴史的なシーン。

そんな出来事を、2006年(平18)6月25日付の日刊スポーツ紙面から、復刻版で特別にお届けする。

(年齢や所属、肩書は当時のもの)

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次期日本代表監督が、前代未聞の失言で判明した。日本サッカー協会の川淵三郎キャプテン(会長、69)が6月24日、成田市内で行われたW杯ドイツ大会の総括会見で、後任監督について「オシムが…」と口を滑らせた。この一言でJ1千葉のイビチャ・オシム監督(65)と交渉中であることが公になった。契約内定前の思わぬ失言に、川淵氏は会見を一時中断して関係者に連絡。約10分後にオシム氏に一本化して交渉していることを明言した。

 

1次リーグ突破の目標を果たせなかった心労が影響したのか。それとも半日以上の長いフライトの疲れが出たのか…。ドイツから帰国直後のW杯総括会見で、川淵キャプテンが思わず口を滑らせた。退任するジーコ監督に代わる後任監督の五輪代表チームへのかかわりを問われた直後だった。

川淵氏 新監督は五輪チームに関して全面的に協力してくれる。その場合、反町(五輪代表)監督がコーチになって、代表監督が(五輪代表も)監督というやり方はしない。(五輪代表)監督はあくまで反町。スーパーバイザー的な立場、総監督として「オシム」が、あっ、オシムと言っちゃったね…。

いかにも隠し事が得意でない同キャプテンらしいうっかりミス。とはいえ今回ばかりは痛恨だった。後任監督については契約が内定するまで「一切、漏らさない」と宣言してきた。先走る報道陣に「W杯もやっているし、報道合戦になって(マスコミに)無駄な労力を使わせるのはよくない」と話してきた。新監督の名前が報道されても沈黙を貫いてきた。22日のブラジル戦後「発表は今月中か7月上旬」と明かしたものの、名前については「協会でも一部しか知らない」と情報漏れがないよう細心の注意を払ってきた。

その極秘情報を内定前に自ら口に出した。失言後、さらに後任監督について質問されると、滑舌のいい川淵キャプテンもさすがにしどろもどろ。「弱っちゃったねえ」と表情を引きつらせ「うそをついて取り消すのも…。どうしようかねえ。頭を整理し切れずに(名前が)出てしまった。なかったことにはならないだろうね。頭がさえてない。冷静に受け答えしてるつもりだったが…」と困惑。見かねた司会の手嶋広報部長がいったん、会見を中断した。

急きょ代表チームの団長を務めた日本協会の釜本副会長が登壇して場をつないだ。その間、千葉淀川社長ら関係者に電話で謝罪。さらに後任監督のリストアップと交渉を行ってきた田嶋幸三技術委員長と協議して事態を収拾。約10分後に会見場に再登壇する際には「広報部長から『史上最大の失言』と言われた」としょんぼりしていた。

再開された会見では交渉の事実を認めた上で「了承を取れずにここで発表するのは申し訳ない。(オシム監督には)あとでおわびしてこのいきさつを話したい」と続けた。10年南アフリカ大会へ、ドタバタ劇での船出? となった。