20年ぶりに上陸したカナリア軍団が梅雨入りした東京の夜を彩った。FIFAランク1位に君臨するブラジルが日本代表を1-0で下した。

後半32分に決勝点となるPKを決めたのはFWネイマール(30=パリ・サンジェルマン)。日本戦では5戦連続9得点とした「日本キラー」が存在感を放った。ブラジルは02年日韓W杯以来の日本での試合に勝利し、通算対戦成績で11勝2分けとした。

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いきなりの美技だった。開始1分、ネイマールがゴールを背にエリア内でボールを受けた。包囲する日本守備陣を尻目に、右足のかかとでヒールキック。FWパケタのダイレクトシュートは惜しくもポストを直撃したが、小雨降る国立競技場に詰め掛けたファンのボルテージを一気に上げた。

柔らかく、時に意表を突く切り返し。前半17分にはフェイントの1つ「エラシコ」を繰り出した。強烈なミドルシュートなどで随所に存在感を放つ。日本の粘り強い守りに、なかなか得点を挙げられず、倒される場面などもあったが、ゴールに向かい続けた。後半32分にPKで先制点を奪う。日本戦は5戦連発の9得点目。控え選手とも一緒に抱き合って喜んだ。90分間フル出場で、「日本キラー」の勝負強さを見せつけた。

チームは5-1と大勝した2日の韓国戦を終え、3日に来日したが、不要な外出はしていない。6月1日に外国人の入国措置が緩和され、ホテルと会場の往復にとどまるバブル方式ではないが、領事館、大使館による歓迎行事に参加することも丁重に断ったという。

W杯で6度目の優勝を狙うカナリア軍団にとっても、貴重な実戦機会だった。韓国では観光名所などで羽を伸ばす姿が目撃されたが、自由に行動したのはこの遠征で1日だけ。前日会見では、コーチ陣が遠藤ら5人の名前を挙げ、しっかり日本の分析をして臨んでいることをうかがわせた。

16年から指揮するチチ監督は「非常にハイレベルな戦いだった。高いクオリティーを示して競い合った内容でした。W杯レベルの対戦でした」と評した。長期政権で、昨夏の東京五輪で2連覇も遂げた新世代との融合も進めてきた。この日の先発11人の推定移籍金による市場価値も約626億円と群を抜く。

ペレの持つ代表史上最多得点まで3ゴールと迫ったネイマールにとっては3度目の挑戦で初の優勝を目指すW杯になる。20年前のW杯と昨年の五輪。2つの栄光に輝いた日本の地をへて、大一番へ向かう。【阿部健吾】