サッカーのFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会は18日、アルゼンチンの36年ぶりの優勝で幕を閉じた。全64試合を無料生中継したインターネットテレビ局「ABEMA」のW杯プロジェクトをゼネラルマネジャー(GM)として率い、その解説ぶりも話題となった本田圭佑(36)が見たW杯とは-。
【取材協力・ABEMA】
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ほぼ1カ月間、本田はW杯を感じながらカタールで過ごした。過去3度出ているが、ここまで長く開催国に滞在したことはなかった。11月17日、ドバイで行われた日本の国際親善試合カナダ戦からW杯モードに突入。同じ日に、ちょうどアルゼンチンがカタール入り。決勝を解説した本田も優勝国とほぼ同じ長さのW杯を終えた。
まず口にしたのは、サッカーへの思いだった。
「サッカーっていいな、いいよね。サッカーに関われていることを、本当に感謝しないといけない。一番感じたのは、あらためてワールドカップいいなって。めちゃいい、信じられへんぐらい、いい。まったくサッカーに関係ない人でさえワールドカップを見てる。偉大よ」
大会をシンプルに総括した。
「プレーのパフォーマンスみたいなところでいうと、エムバペが一番。MVP。でも、何度も言うようにメッシにはこれまでの歴史があって、アルゼンチンのリーダーとしてピッチに立ち続けて、点も取ったしアシストもした。やっぱりメッシの大会。パフォーマンスが下がっているにもかかわらず、もがきながら活躍し続けようと思ってるメッシに惹(ひ)かれて、このワールドカップ、メッシを応援していた。優勝させてあげたかったけどね、エムバペを。でも、メッシがいたということだけが不運だった」
選手であり続けるが、4年前に日本代表から退いた。日本は16年ぶりに本田のいないW杯を迎えようとしていた。だが、日本のサッカー史上最もW杯を愛し、W杯に愛された男は4年に1度の大舞台でまた、主役になった。
日本で全64試合を無料生中継したABEMAのGMとして、日本代表戦4試合を含む6試合を解説。「本田の解説」がトレンド入りするなど、話題をさらった。
従来形とは一線を画す自由すぎる解説ぶり。長いロスタイムの7分に驚き、素直に発した「ななふうん!?」の言い回しが大いに注目されるなど、結果的に名言連発となった。
ただ、狙っていたわけではなかった。遠い日本国内の盛り上がりも結局、伝え聞くだけで実感のないまま終えた。今後についても「解説をやる予定は、いまのところ、まったくない」と言う。
「自然に、自分らしく、感じ取っていることをできるだけ伝えるということを優先してやった。より自然体でやろうと。まさか自分が解説者をやるなんて想像もしなかった。いざやってみてポジティブに気持ちを切り替えて解説に挑んだけど、何でも前向きにやってみるとそれなりに楽しいこともあるというのを、あらためて感じさせてもらった。素人がいきなり何か大きなことを、いろんな人の前でやるときの参考にしてほしいアドバイスとしては、僕が今回取り組んだように“自分らしくやる”。それ以外に方法などないと言いたい」
その解説で、あと押しした日本代表の戦いぶりは。
「もう、100点満点だと思いますね。予選を突破できるとは思っていなかったので。多くの人も、多分負けるやろうと思っていたはず。日本がとった戦略、残した結果というのは、まさに結果オーライではあったけれども、結果が重要だし、結果がすべての世界というのも事実」
日本サッカー協会も選手も、史上初の8強を「新しい景色」と表現して目指し、この言葉があふれた。ただ、どこかで、いつ死んでもおかしくないと腹を決め、日々を全力で生き続ける本田にはピンとこなかったようだ。
「俺は、今日から明日に進む時点で、毎日が“新しい景色”やと思っている。サッカーの記録どうこうじゃなくて、『いやいや、明日はもう、常に新しい』と。新しい景色の定義が違いすぎて、すごい違和感を感じていた」
解説でもべた褒めしたMF三笘薫には、大きな期待を寄せている。
「日本の歴史でみた時、中盤ですごい選手はこれまでいっぱいいるけど、やっぱり前の選手でアタッカーかFW、そのどっちかで個でガッツリいける、あれほどガッツリいけるというのは、いままで本当にいなかった。ただ、これから。ここからは三笘さん次第。結局スタメンで出てない事実も無視できない。発見は三笘さん、堂安さん(堂安律)。挽回に期待したいのは、やっぱりタケ(久保建英)。タケには期待したい。悔しい思いをしたワールドカップだったと思うので」
大会最後の解説を務めた決勝の1日に密着した特別番組が23日午後9時からABEMAで放送される。放送席からメッシがトロフィーを高々と掲げるシーンを目に焼き付けた。その瞬間、何を思ったのか-。
「指導者としてこの舞台に戻ってきたいと、あらためて再確認できた。監督としても、選手のときと同じくらいワールドカップ優勝を目指していると再認識できた大会。嫉妬心だとか、悔しいみたいな気持ちの方が、もうすでに感情としてはデカい。結果的にABEMAさんに一番感謝したいのは、解説する機会を与えてくれたこと以上に、この悔しい気持ちを感じさせてくれる場を与えてくれたこと。来てなかったら、この感情は感じられなかった。言うほど簡単なことじゃない。でも、いけると思ってる。やれる気はしている。36歳。アルゼンチンも36年ぶりに優勝した。初めてワールドカップを外から生で見て、自分が一番ほしかったものがワールドカップ優勝で、その場に立ち会えて悔しい思いができているということが、今後の自分の人生にエネルギーを与えてくれている。どうするのかは、もう俺次第。これまで通り『見といてくれ』としか言えない。結果がすべての世界なんで、やってのけたいなと思います」
決勝から中1日の20日。ドーハから休む間もなく、カンボジア入りしていた本田は、実質的に率いるカンボジア代表を国際Aマッチで勝利に導いた。23日夜にはインドネシアとジャカルタで戦う。
いまこの瞬間も、W杯優勝へもがき、戦い続けている。【八反誠】
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◆本田の解説 11月23日の日本の1次リーグ初戦、ドイツ戦で本格デビュー。システム変更を“予言”する戦術的な鋭さとファン、サポーターに寄り添う素直な発言が相まって、大きな話題となった。
「三笘さん」「堂安さん」など、年下の主力をさん付けで呼ぶ一方、ともにW杯を戦った主力は「マヤ」(吉田麻也)「ユウト」(長友佑都)などと、愛称で呼んだ。「俺はまず、一律で、自分と一緒に長い間代表でやっていなかった人には、『さん』をつけるようにはしている。むしろ、ビジネスの世界では当たり前の話なんで」とこだわりを語っていた。
コンビを組んだテレビ朝日の寺川俊平アナウンサーとの掛け合いも話題に。寺川アナが実況中、「久保」と言うべきところを「本田」と伝えてしまうと、すかさず「僕、出た方がいいっすか?」とボケてみせた。
型にはまらなかった。やっかいな選手を「うざい」、雑なプレーを「ざつい」、難しいことを「むずい」と独特の言い回しで表現。守備網にかけることを、サッカー用語の「ハメる」「ハメにいく」を多用し、聞き慣れない視聴者の興味を誘い、一般化? を推し進めた。一方で、わからないことは「何ですか、それは?」と素直に質問。ドイツ戦の「ズーレが穴なのよ」の指摘は、日本の得点となって実証された。ピッチ解説を務めた槙野智章との軽妙かつ専門的な連係も見事だった。
アルゼンチン推しだった決勝は超ヒートアップ。好プレーに「バモス、アルゼンチン、バモス」と後押し。エムバペのファーストネームを「キリ、キリアンって言うんですね」と試合中にインプット。後半ロスタイムには興奮し過ぎたのか「ちょっとね、体調悪いかもしれないです、僕。座ってんのに立ちくらみみたいになってます。興奮し過ぎてるんですかね?」と吐露する場面もあった。
◆番組メモ W杯決勝の1日に密着した特別番組、本田圭佑が見る「FIFAワールドカップ決勝」~世界中が熱狂する至高の戦い~は、ABEMAで23日午後9時から放送。

