女子日本代表なでしこジャパン(FIFAランキング8位)が、北朝鮮(同9位)と引き分けた。パリ五輪(オリンピック)出場権を懸け、ホームアンドアウェーで争う第1戦。強い日差しの中、運命の2連戦が中立地で幕を開け、スコアレスドローの結果を持ち帰ることになった。

なでしこは4-3-3システムで決戦を迎えた。GK山下杏也加(INAC神戸)に、最終ラインの4バックは右から清水梨紗(ウェストハム)高橋はな(三菱重工浦和)南萌華(ローマ)古賀塔子(フェイエノールト)。中盤は主将の熊谷紗希(ローマ)をボランチに、ダブル司令塔の長谷川唯(マンチェスター・シティー)と長野風花(リバプールFC)が前に並ぶ。3トップは右の藤野あおば(日テレ東京V)と左の植木理子(ウェストハム)を両翼に、最前線に田中美南(INAC神戸)が陣取った。

前半は手堅く0-0で折り返した。開始2分、いきなり左CKから熊谷がヘディングを放ったが、ゴール右へ。その後は一進一退の攻防になる。42分、藤野の右クロスのこぼれを拾い、田中が右足シュート。DFに当たってコースが変わりGKの逆を突いたかに見えたが、左足1本でビッグセーブされた。5バックで守りを固めてきた北朝鮮を攻めあぐね、球際で苦戦し、ロングボールで押し込まれた。それでも意地のスコアレスでハーフタイムに入った。

第1戦は当初、平壌の金日成競技場で開催される予定だった。ところが、試合運営に関する準備面で不透明な点が多く中立地が模索され、なでしこ史上初となるサウジアラビア開催になった。日本から約9600キロ離れた紅海の沿岸都市へ。その正式決定が試合3日前と、混迷を極めていた。

現地の午後4時4分(日本時間同10時4分)キックオフで、気温31度、湿度16度。序盤から両チームの選手が顔を真っ赤にし、飲水タイムでは氷を首元に当てるなど暑熱対策をしても苦しめられた。

その中で、後半も先発と同じメンバーがピッチに立つ。欧州組が居並ぶ陣容だったが、北朝鮮の執念の堅守を崩せない。主将の熊谷や背番号10の長野を下げた後の28分には、あわや失点のクロスバー直撃シュートを放たれた。右クロスに頭で合わされて肝を冷やした一方、攻撃陣がシュートを打てたのは後半29分。攻守に手を焼いた。

やはり不気味で強かった。北朝鮮は昨秋、国際舞台へ5年ぶりに復帰したばかり。16年のU-17、20W杯をダブル制覇して世界2冠を達成したものの、新型コロナ禍を理由に18年ジャカルタ・アジア大会以降は表舞台から姿を消していた。それが突如、昨年9月の同杭州大会に参戦。決勝で、なでしこジャパンではない若手主体の女子日本代表に1-4で敗れたが、FWキム・キョンヨンが大会6戦12発で得点女王に輝いた。その時のメンバーから、さらに若い平均年齢21・8歳(日本は24・8歳)という構成で勝負してきた。

日本は通算7勝5分け12敗。アジアでは唯一、負け越している相手に、終盤こそ攻勢を強める時間帯もあったが、勝利を収められなかった。

第2戦は28日に国立競技場で。2戦合計の勝者がパリ切符を獲得する。花の都へ行けるか否か、次は最低気温予想が3度と寒い東京で午後6時34分、難敵を迎え撃つ。

熊谷主将「暑さもあった中、もちろん第1戦、勝ってホームに向かいたかったですけど、まあ0-0という形で終わって、もうホームで勝つことだけ考えて準備したいなと思っています。なかなか自分たちがボールにプレッシャーをかけることができなくなって、守備でマッチアップできなくなって、ロングボールの中、最終ラインを上げるのも遅くなってしまった。しっかり反省したい。後半、向こうが私たちの動きを見て戦ってくるようになっていたので、もう1ギア上げないと。自分たちのシュート数、かなり少なかったと思いますし、進入する怖さを出せなかった。第2戦に向けて、前へ。勝つしかない戦い。ホームをアドバンテージに、日本の皆さんとパリ切符を取れるように、しっかり頑張っていきたい」